ビル・グロス:米独スプレッドのゆくえ

債券王ビル・グロス氏が足元の市場環境認識についてツイートした。
その中で、独国債の相対的に低すぎる利回りが指摘されているが、これは投資にとって何を意味するのだろう。


1) 世界経済は減速中
2) リスク・オフを選好
3) ハイイールド債は脆弱
4) 米国債/独国債スプレッド論が過去数日表面化した

昨日グロス氏がツイートした。
もちろん現在の興味は4)だ。
4)はグロス氏が先月29日に大幅評価損を出した原因だからだ。

グロス氏は「米独スプレッド2%は歴史的にみて高い」として米国債をロング、独国債をショートしていた。
米国債に比べ独国債が買われすぎ、つまり、独国債利回りが低すぎるとの読みだった。
ところが、そのポジションがイタリアの政情不安により単日で大幅損失をもたらした。
イタリア売り・ドイツ買いが起こり、買われすぎの独国債がさらに買われたからだ。
ただし、これは1日の動きにすぎず、グロス氏が白旗を上げた様子はない。

グロス氏の観察は単に米独スプレッドという相対的な話にとどまるものではない。
独経済の状況から見ても独国債は売られても(金利上昇しても)おかしくない状況にある。
Reutersが伝えている。

「ドイツで長期金利と物価上昇率の差が、60年超ぶりの高水準に迫りつつある。
・・・ドイツ国債にインフレリスクが十分に織り込まれない形になっており、滅多にない売り持ちの機会だとの声も出ている。」


ドイツではエネルギー高の影響もあり、CPIが2.0%を超えている。
それなのに長期金利は0.4%前後の水準にある。
インフレとの比較においても長期金利が低すぎるとの感覚は正常だろう。
先月末のイタリア不安は、このギャップをさらに拡大し「60年超ぶりの高水準」に押し上げた。

最近もECBは量的緩和終了に強い意欲を示している。
欧州でも金融政策正常化が始まれば、独金利上昇のカタリストになる可能性は十分にある。
グロス氏は、極端な状況が解消するとの読みで、ロング/ショート・ポジションをとっていたのだ。
一方、イタリアなどユーロ圏の不安が長くかつ深刻に居座り続けるなら、独金利が上げ渋る可能性も残っている。

日本の投資家に対するインプリケーションは何だろうか。
おそらく、独金融あるいはユーロ圏の金融が急激に引き締まる可能性ではないか。
これを、欧米の金融引き締まりと見るなら、円からドルやユーロへのキャリー、そして円安を連想させる。

もっとも、米国については市場の利上げ織り込みはほぼ行き着いているように見える。
むしろ、景気後退への転換による利下げが意識されるようになり、円高が連想される可能性もある。
だから、ドル円は読みにくい。
一方、ユーロ圏の金融引き締めについては、市場の織り込みはまだ十分でないだろう。
イタリアなどの不安が燃え上がることなく、ECBが最近の正常化への意欲を実行していくなら、円安・ドル安・ユーロ高という可能性が見えてくる。
ドイツのインフレ上昇とゼロ金利にとって、それは至極当たり前の方向性かもしれない。


 - 海外経済, 投資 , , ,