ラグラム・ラジャン:片手落ちの通商政策

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元インド中央銀行総裁 ラグラム・ラジャン教授が、貿易摩擦と金利上昇について語った。
米財政悪化による経常赤字悪化が、金利上昇とともに政治・経済のリスク要因になると話している。


米経済が完全雇用に近いことを前提にすれば、トランプ政権が財政赤字を増やしたことで、貿易赤字が拡大するのはほぼ間違いない。
財政赤字を増やして経済の需要を増やせば、それは何かに向かう。
外国の財・サービスに向かうだろう。
政権自体の政策の結果、貿易赤字は拡大してしまう。

ラジャン教授がCNBC経済学の初歩を教えている。
トランプ大統領が慢性的な経常赤字を問題視するのはまっとうなことだが、その経済政策が少なくとも短期的には経常赤字を拡大させてしまう。
大統領は輸出国との2国間交渉によって問題を解決しようとしているが、これはナンセンスだ。
相手国に考えるべき点がないとは言わないが、本来取り組みべきは自国のあり方だ。

「米国がある意味で投資を減らし貯蓄を増やさない限り、貿易赤字は減らない。
もしも貿易赤字が大問題なら、米国サイドにもやるべきことがある。」

短期的にはISバランスが大きく改善することはなく、米経常赤字は悪化するだろう。
そうだとしても、とにかく今、米景気は改善している。
このチャンスを逃さず、FRBは金融政策正常化を進めている。
ラジャン教授は、この方向性が今後もしばらく変わらないだろうという。

「本当に悪いことが起こらない限り、FRBはストップしない、利上げの道筋を逸れない。
そうではなく、待って、やるべきことを行い、もう十分かまだ足りないか状況を見定めようとするだろう。
私は、6月利上げは決まりで、年内あと2回利上げし、その後FRBが様子見を始めると予想している。」


教授の推測の根拠は、短期側の米中立金利について2.75-3.00%程度にコンセンサスがあるとの観察である。
これは、先日の発言からの推測とも一致している。
FRBがこの中立金利を踏み越えるには大きなハードルがある。
金融緩和の副作用・インフレにより利上げを余儀なくされるか、米経済が潜在成長率を高め中立金利を上昇させるかだろう。

米金融市場のリスクについては、一部分野でレバレッジが高まっていると指摘した。
米景気サイクルが成熟していくにしたがい、市場の関心は《すでにバブルなのか》、《これからバブルが始まるのか》に集まる。
ラジャン教授は2005年、米経済も米経済学者もまだ浮かれている頃、住宅バブルを予想し的中させた人だ。
教授に市場のリスクの質問が向けられるのも当然だ。

「借金をロールオーバーできるかどうかがこの数年レバレッジを用いる上で重要になっている。
金利が上がり、債務者の利払い・元本返済の能力が厳しく見られ始めるにしたがい、借金する能力は脆弱になっている。
長短金利が上昇することで、米経済における高レバレッジ分野はより圧迫されることになるかもしれない。
これはみんなが知っていること。
レバレッジのかかった経済主体は存在し、何かが起こるだろう。」

また、ETFについても、問題を大きくしてしまう可能性があり、注視が必要と語った。

「ETFの中には走りやすい性格のものがある。
ひとたび売られ始めると、それが売りを呼び、問題を大きくしていく。
年初にも見られたことで、今後も注意すべき可能性だろう。」


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