マーティン・フェルドシュタイン:社会保障と金利

民主党・共和党両政権で要職を務めたMartin Feldsteinハーバード大学教授が、米連邦政府の財政悪化を心配している。
大衆迎合的な政治が財政再建を遠ざけているという。


「現在の法律の下で連邦政府は今年8,000億ドル借りなければならないが、この金額は2028年には1.6兆ドルに倍増する。
この間、財政赤字対GDP比率は4%から5.1%に増加する。
この単年度の赤字の結果、連邦政府債務は現在の16兆ドルから2028年には28兆ドルまで増加する。」

フェルドシュタイン教授がProject Syndicateで財政悪化について危機感をあらわにした。
教授は米国の独立財政機関である議会予算局の試算を紹介している。
10年前に40%だった債務対GDP比率が現在は78%とほぼ倍になり、2028年には96%に達すると予想されているのだ。
日本が米国のことを言えた義理ではないが、やはり心配な増勢であろう。

こうした米財政悪化の主因は決してトランポノミクスではない。
トランプ減税がなかった場合の2028年の債務対GDP比率は93%と予想されている。
減税ありの場合の96%とたいして変わらない。

今後10年の財政赤字増大の主因は、中間層の老齢者の給付コスト上昇である。
これら(公的年金とメディケア)2つの制度により年間の財政赤字はGDPの2.7%も上昇する。


まさに日本が歩いてきた道を米国が追い付いてきている。
社会保障費増大による財政悪化を立て直すのは容易ではない。
社会保障費削減は票になりにくい政策だ。
フェルドシュタイン教授も、現状、実現可能な選択肢ではないと考えている。
しかし、結局はこれに手を付けずに財政再建はありえないとも釘を刺している。

この厳しい見通しは金融市場を直撃する。

「米政府債務の大半を(FRBを除けば)外国投資家が保有しているため、この予想は、今後10年で6兆ドルを超える米国債を外国人投資家が吸収することを示唆している。
この極めて大きな増加分を国内・外国投資家ともに保有してもらうためには、米債務の長期金利が大きく上昇する必要があろう。」

これが投資家心理を大きく冷やす。
国債を買ってもらうには利回りが魅力的でなければならない。
しかし、金利が上昇すれば政府財政は悪化し、国債の信用力が低下しかねない。
だから、意図してか、しないでか、中央銀行には金利押し下げの圧力が働く。
しかし、金利が低下しすぎれば、国債の魅力は低下する。
仮にうまく均衡したとしても、極めてあやうい均衡と言わざるをえない。

将来、債務比率上昇・短期金利上昇・インフレ上昇の組み合わせが10年債利回りを4%超に押し上げるだろう。


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