日銀:海外投資が急増

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日本銀行調査統計局が「資金循環統計からみた最近のわが国の資金フロー」と題する論文を公表している。
資金循環勘定の基本から、実際の解釈までわかりやすく書かれており、同勘定に馴染みのない人は読んでみてもいいかもしれない。


過去20年ほどの日本の経済主体間のマネー・フローが解説されている。
主なところを紹介したい。

「2000年代前半は、1990年代から続くバランスシート調整により、家計、事業法人とも金融負債の削減が進行していたが、最近の資金余剰は、低金利環境とその下での景気回復が続く中、家計、事業法人とも、金融負債の拡大を伴っている。」

ここは「金融負債の拡大を伴っている」に注目したい。
これは、経済回復の原動力となる信用創造が回復する兆しを感じさせる。
日銀の金融緩和が功を奏し、家計・企業が借金をして投資を行ったのだ。

ただし、手放しでは喜べない。
家計については住宅ローンの回復だから喜んでよかろう。
しかし、企業はそうとも言えない。

「2000年代前半に大幅に落ち込んだ不動産業(貸家業)以外の事業性借入が下げ止まってきているとみられる。
さらに、借入金利が一段と低下する中、アパートローン等ウエイトの大きい貸家業向け貸出が増加し、事業性貸出全体を下支えしていると考えられる。」

1990年以降のバブル崩壊過程の記憶がある人からすれば、アパートローンの拡大は諸手を挙げて喜べる話ではない。
現在のアパートローンは、超長期固定金利となっているだろうか。
現在のアパート供給は、日本の人口動態と擦り合うものだろうか。
日本の住宅価格が極端に上昇していないのがせめてもの救いだが、それが逆にアパート投資を誘惑してしまう。


企業は賃貸事業以外の投資を増やしていないのか。

「企業における国内での成長期待が海外と比べ低位にとどまる中、大企業を中心に海外投資を積極化する姿が窺われる。」

国境の制限を受けない企業は、現業への投資は行っているものの、その場所は国内ではないようだ。
これは、日銀の狙い通りとも言える。
日銀は金融緩和において、民間セクターの海外投資により円安が誘導されるというシナリオのポートフォリオ・リバランスを見込んでいた。
それが、まさに起こっている。

「家計や事業法人等での資金余剰が海外に振り向けられた結果、対外直接投資・証券投資残高は1999年度末の153兆円から2016年度末には705兆円に増加しており、国内非金融部門の金融資産3,628兆円の約2割に達している。」

金融緩和で金利が下がり円安にもなったのに、比較的高い賃金の雇用を生む生産拠点などが増えない。
もちろん、金融緩和をしなければ、もっと国内は空洞化したのかもしれない。
しかし、1つ言えるのは、金融政策では十分な社会厚生が得られない可能性が高いということではないか。
それでも、金融緩和を継続せざるをえないなら、日銀はどこかで自ら講じたポートフォリオ・リバランス効果を恨むことになるかもしれない。
金融緩和の大成功とともに訪れうる円安・インフレのスパイラルだ。


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