ラインハート:新興国を苦しめる1-2-3

新興国経済の先行きについて市場関係者の間で見方が割れている。
国家は破綻する』の著書で有名なハーバード大学Carmen M.Reinhart教授が、新興国経済全体の状況について警戒すべきと主張している。


新興国の全体像は、5年前、ましてや世界金融危機の時代と比べてはるかに脆弱だ。
・・・お先真っ暗とは言わないが、現在、2013年のバーナンキ・ショック(taper tantrum)の頃にはなかった内的・外的脆弱性が多く存在する。

ラインハート教授がBloombergで、新興国経済の脆弱性を指摘している。
リーマン危機時より、はるかに脆弱になったというのが教授の評価だ。
リーマン危機の頃は、むしろ新興国経済には急速に回復する確かな理由があったという。
対外債務が極めて少なかったという点だ。
それまでの新興国危機への反省から、新興国は対外債務を減らす努力をしていたためだ。

ところが、一部地域で再び債務が積み上がっている。
先進各国で長く続いた異例の金融緩和がそれを後押しした。
アフリカ南部などで中国からの借入れを積極化している国が多く見られ、中国からの借入れのほとんどがドル建てである結果、新興国の債務の2/3がドル建てになっているという。

「10年間の超低金利の後に強い借入れ意欲が存在し、しかも金利上昇が始まり米ドルが反転上昇すれば、脆弱性は上昇すると予想される。
低所得の新興国は債務返済が困難になるだろう。
多くのケースで中国が貸し手だが、内容がよくわからない。
すでに債務リストラが一部始まっているかもしれない。」


つまり、現状の新興国リスクは金利上昇とドル高に一因がある。
ドル高の大きな要因はドル金利上昇だろうから、煎じ詰めれば金利上昇に根があることになる。
金利上昇の中、世界経済のピーク・アウト懸念が、新興国経済の問題点を浮かび上がらせている。
(幸い、ラインハート教授が懸念を抱く新興国と本邦投資家が得意とする新興国では重心がずれているように見受けられる。)

金利上昇の大きな要因はインフレ圧力だ。

「現在のインフレ見通しは、ありのままのインフレについての話ではない。
米金融政策への反応として示唆されるインフレだ。
引き締めが大きくなればなるほど、金利上昇への予想が強まり、新興国市場に何重もの影響が及ぶ。」

米国をはじめとする先進各国の金融緩和が強力だった分、その巻き戻しの道のりも長くなる。
これまでほとんどリターンを生まなかった米債に相応の利回りが見込めるようになれば、新興国へ向かっていた資金が逆流を始める。
これが新興国経済を苦しめる。
そして、金利だけでなく為替でも新興国は苦境に立たされる。

「米政策が引き締まり、他の先進国経済の中央銀行が追随しなければ、ドル高が進む。
ダブル・パンチだ。」

先述のとおり、新興国債務の大半が米ドル建てだ。
ドル建ての対外債務はドル高で増価してしまう。
さらに、ラインハート教授は、国内債務と対外債務の区別があいまいになったと指摘する。
新興国の経済発展・規制緩和の皮肉な結果だ。

「国内債務が非居住者によって保有されているケースが多くなり、これが波及効果を大きくしてしまう。」

さらに、ラインハート教授は畳みかける。
先進国から新興国へのキャリー・トレードがボラティリティと強く関係している点を指摘する。

「(高水準だったキャリー・トレードは)単に(先進国側の)金利が低かったからだけでなく、ボラティリティがしばらくなかったためでもある。
ボラティリティは上昇しており、新興国への資金流入にはマイナスだ。」


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