浜田宏一教授の注文の多い財政政策

内閣官房参与 浜田宏一 イェール大学教授が、経済誌への寄稿で君子豹変ぶりを披露した。
その標的はすでに金融政策から他のところへ移っているようだ。


日銀は、2%の物価目標を堅持する考えだが、達成にはまだ距離がある。
国民にとっては、物価目標の達成よりも、完全雇用の達成のほうがより重要だ。

浜田教授が週刊エコノミストで書いている。
《国民にとっては物価目標より雇用の方が大切》という命題は実はデフレ時代から真であったろう。
しかし、異次元緩和をやり切る前の浜田教授の口から、こうしたフレーズが聞かれることはなかったはずだ。
金融緩和(または非不胎化介入)を通してリフレ(・円安)を実現することで雇用を改善しようというアイデアだったからだ。
ところが、物価が上昇する前に経済は完全雇用に近い状態まで改善した。
そこで、君子は豹変した。
豹変の跡はその論説の至るところに見える。

君子は豹変す

「(日銀法を引いて)物価目標が雇用、生産の目標を達成するための副次目標としてあるに過ぎないと私は考える。
・・・
インフレが起こらずに、雇用が改善するのがベストであり・・・物価目標にこだわる必要はまったくない。
・・・
日銀は、日本経済に過熱のサインがあると判断すれば『出口』の方向に向いてもいい。」


さすが君子。
見事に豹変するのだ。
しかし、油断してはいけない。
変身したとしても、その先は豹、肉食獣である。
獰猛な牙を抜いたわけではないのだ。

金融の次は財政

浜田教授は、日銀が大量の国債を保有するリスクについて、心配はいらないという。
政府と日銀の連結ベース、つまり統合政府で考えればいいという。
また、クリストファー・シムズのFTPLのインプリケーションとして「政府の財政は、ある程度自転車操業になったとしても国民生活の向上に寄与するなら過度に心配することはない」とも書いている。
これだけの短いフレーズに「ある程度」、「国民生活の向上に寄与するなら」、「過度に」と3つも制限を示す語句が入っている。
書き手の思慮深さと自信のほどがうかがわれる。

いずれにせよ、浜田教授の思いはこうだろう:
《金融政策には相応の成果があり、すでにやり切った感がある。
だから、これからは日銀単独ではなく、政府まで入れた連結ベースまでお店を拡げたい》
金融政策を拡張しきった今、財政政策もやれるところまで拡張したいということなのだ。

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