ロバート・シラー:市場を動かす本当のドライバー

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資産価格の実証的研究で2013年ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授が、行動経済学者らしい市場分析を行っている。
その結論はファンダメンタルズでもテクニカルでもなく、心理学そのものだ。


株式市場で奇怪なのは『何が市場をドライブするのか』だ。
基本的なドライバーは『他の人たちが何を考えていると思うか』だ。
もしも他の人たちが市場に参入しようとしていると思えば、彼らより先に参入したいと思う。

シラー教授はThe Politicのインタビューで、投資家の行動を「どこか列の前の方に割り込むようなもの」と解説した。
特に1月終わりから2月にかけてのような大きな変動ではそうした心理が強く働くのだという。

シラー教授の有名なCAPEレシオは資産価格と長期的ファンダメンタルズの比較を通して価格水準を測ろうというものだ。
しかし、教授の最終的な興味はファンダメンタルズではない。
《ファンダメンタルズがこうだから株価はこうあるべき》と言ったところで、株価が常にその通りになるわけではない。
市場をドライブするのはファンダメンタルズでも、テクニカルでもなく「他の人たちが何を考えていると思うか」だ。
実に「他の人たちが何を考えているか」でもないのだ。
個々の投資家が「他の人たちが何を考えていると思うか」なのである。


シラー教授は現在『ナラティブ経済学』という本を書いているところだという。
ナラティブとは、市場で優勢となっているストーリーと考えればいい。
このナラティブこそが市場全体を動かす力を持っている。
シラー教授は大多数の投資家の実態を見透かしている。

「投資家はデータを独自に読んだりしない。
・・・みんな『今のストーリーは何か』聞くだけなんだ。
・・・投資家は本当に大切なことをいくつか無視し、ニュース・メディアが読者を面白がらせ売上を増やすために用意したものに集中してしまう。」

シラー教授は無視されている「本当に大切なこと」として2つの例を挙げる:

  • 物価連動国債: 投資の実質ベースの価値を守ることができる。
    「狂ったFRBは本当にインフレを高めて、債券の価値を奪い去ってしまう。」
    しかし、物価連動国債への関心は極めて低い。
  • 不動産価格指数先物: 住宅価格変動リスクをヘッジできる。
    シラー教授はCMEとともに2006年S&P/Case-shiller Home Price indices Futuresを開発している。
    しかし、住宅保有者も建設業者もこの先物に関心を示さない。

こうした大切なことが無視される一方で、株式市場ばかりが関心の的となる。
実はさほど大切でないことが関心を集めるのである。
シラー教授は、1929年、株式市場がナラティブになったと話す。

「1929年が重要とされるのは、他の人が重要と思うからなんだ。
それがナラティブなのは、あなたが他の人の話を聞いて、あなたがそれを再び重要だと仮定するからなんだ。」


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