伊藤隆敏教授:景気サイクル終盤で起こること

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伊藤隆敏コロンビア大学教授が、日米の景気拡大の持続性について予想した。
米国における論調の変化を反映し、教授の言にも明らかな変化が見える。


最近では(米国では)低インフレ・低金利という話よりOld Normalに戻れるのではないかという感じになってきた。
New Normalという言葉を聞かなくなった。

米経済が目に見えて改善している中、伊藤教授はテレビ東京番組で米国における最近の論調を紹介している。
教授は昨年まで(主に日本での)物価水準目標の導入にも言及していたから、米国での空気は大きく変わったことがわかる。
こうした点は、金曜日発表の米雇用統計へのコメントにも表れている。

「米国の場合(物価上昇率が)2%に近づいているので、大幅な物価上昇は(金融引き締めを通して)ブレーキを踏むことにつながるため警戒される。
ただ、まだ2%まで余裕があり、そのあたりで現状維持になるといい。」

同統計では引き続き米労働市場の強さが確認されたが、先月市場を揺るがした平均時給の伸びについてはいったんスロー・ダウンした。
平均時給のスロー・ダウンはインフレ急騰懸念を緩和し、市場に好感された。
伊藤教授は(インフレ昂進懸念がある中での)2%弱のインフレを歓迎しているように聞こえる。
米国でもインフレ目標引上げ・オーバーシュート型コミットメント・物価水準目標が求められていた1-2年前と比べて大きな変化だ。

FRB利上げは年4回

伊藤教授が2%目標に満たない現状の物価水準に満足しているように見える背景には、急がなくても米国での賃金上昇が継続すると見ているからだ。


「サービス業では(サービスが)よければ対価を払う習慣になっており、チップも最近は値上がりしている。
タクシーもクレジット・カードを通すと、ボタンを押せばデフォルトの20%を払うことになっている。」

米国の場合、供給不足になれば必ず価格が上がるというマーケット原理が働いており、賃金についても現状の不足に見合う分だけ上昇すると見ているのだ。
これはインフレの漸増を意味している。
伊藤教授は、今年のFRB利上げを4回と予想している。
市場の織り込みは利上げ回数を高め、CMEのFed Watch Toolによれば今年2-4回となっている。

市場に織り込まれたFF金利誘導目標の確率分布(12月のFOMC)
市場に織り込まれたFF金利誘導目標の確率分布

景気サイクル終盤で起こること

好景気が続くと、自ずと皆の関心事はそれがいつ終わるのかになっていく。
伊藤教授は景気サイクルの後半で起こることを簡潔に解説している。

「(景気拡大が)長く続くと(供給力の)余裕がなくなってきて、供給余力を食いつくすと、インフレが起き、中央銀行がブレーキを踏み不況に突入するというのがパターンだ。」

まさに、レイ・ダリオ氏やJP Morganが解説したのと同一の認識である。

(参考) レイ・ダリオ:景気サイクル終盤で起こること
JP Morgan:景気サイクル終盤で起こること

(次ページ: オリンピックまでは景気拡大が続く)


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