レイ・ダリオ:景気サイクル終盤で起こること

Bridgewater AssociatesのRay Dalio氏が、現在を「景気サイクルの終わりから1-2年前」の時点と明言した。
中央銀行が市場の織り込みより金融を引き締めすぎると、債券、株式、景気の順に悪影響が及んで行くだろうと言う。


今向かっているのは債務危機ではないだろう。
今私たちが取り組んでいるのは、金利変動への感応度なのだろう。
経済は金利変動に対して異常に高い感応度を持ってしまっている。

ダリオ氏が印ETのインタビューで語っている。
同氏はサブプライム/リーマン危機を的確に言い当てた1人としても有名だ。
ブリッジウォーターが2007年に行った計算では、多くの重要な経済主体が債務を返済できなくなるとの結果が弾き出されていたのだという。
この予想に基づき、ブリッジウォーターは危機の中でも利益を上げ続けた。
今回の計算結果は大きく異なり、システミックリスクは予想されないという。

今は終わりの1-2年前

ダリオ氏はこのインタビューで再びはっきりと景気サイクルにおけるタイミングに言及している。
現在は「景気サイクルの終わりから1-2年前」と予想していると明言している。
その上で、独自の景気サイクル理論を解説した。

「生産能力の増加には一定の速度がある。
その生産能力増加速度は、欧米のような先進国では年率2%をわずかに切る水準にある。
それを上回る速さで需要が増加すると、サイクルの後半に差し掛かることになる。
この段階では成長率は減速せざるをえない。」

現在、経済はブレーキに足を置かなければいけない段階にあるのだという。
自律的な景気回復とともに、さまざまな刺激策が講じられ、需要が拡大しつつあるからだ。
経済は完全雇用にあり、需要が増えても供給側の制約がブレーキとなってしまう。

アクセルを踏めばブレーキも踏まざるをえない

特に米経済について言えば、ブレーキは生産能力の制約だけではない。
減税・歳出増は経済を刺激すると同時に2つのルートでブレーキを踏むことになる。

  • FRBがバランスシートを正常化する中で、政府の財政が悪化すれば、米国債の需給がダブルで緩む。
    これが(長期サイドまで)金利上昇を引き起こし、金融環境を引き締める。
  • 完全雇用に近い中での財政刺激が景気・インフレをさらに過熱する。
    結果、FRBは(短期サイドでの)FF金利引き上げも加速せざるをえなくなる可能性がある。

ダリオ氏は現政権の財政政策について「アクセルとブレーキを同時に踏むようなもの」と語っている。
そして、政策サイドでブレーキ役を果たす中央銀行の行動が一つの焦点となる。

完璧なさじ加減は不可能

経済が生産能力の制約に近づいている時、財政刺激策によるアクセルとFRB引き締めによるブレーキを同時に踏むのは至難の業だ。

ダリオ氏は、中央銀行が完ぺきなさじ加減を実現できるものではなないとし、そこに不況のリスクが生じると指摘する。
永遠にアクセルを踏もうという人たちもいるだろうが、アクセルを踏めば踏むほど、ブレーキを踏まざるをえない状況に追い込まれる。
だから、不況のリスクから解放されることはない。

特に過去10年の異例の低金利環境の中、極めて低い金利に慣れきった資産・負債が莫大に積み上がっている。
ダリオ氏は、経済が金利への感応度をあまりにも高めてしまった点を懸念している。
つまり、それだけ微妙なさじ加減が中央銀行に要求されているということだ。
金融がわずかに緩和的すぎるだけで経済・資産市場は過熱を続け、わずかに引き締め的すぎるだけで冷やしてしまう。

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