ケネス・ロゴフ:技術革新が金融政策を危うくする

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ハーバード大学Kenneth Rogoff教授は、技術革新が中央銀行の金融政策を難しくすると予想している。
科学者が予想するように、シンギュラリティを超えて技術が急速に発展する時が来るなら、経済が急成長に耐えられなくなる懸念があるという。


それでも、最も可能性が高いと思われるのは、人工知能や他の新技術がこれまと比べて経済成長に対してはるかに大きなインパクトを与えることになるだろうということだ。

ロゴフ教授はProject Syndicateで、技術革新が経済に及ぼす影響について論じている。
私たちは目覚ましい技術革新を目の当たりにしてきたが、その変化とはうらはらについ最近まで低成長の時代を続けてきた。
2005年以前の成長を取り戻せると考える経済学者は少ない。
経済学者は総じて(相対的)悲観論者なのだ。
一方、科学者ら、特に若い世代には、新技術がどんどん開発され、社会を変えていくという楽観論が支持されている。
中には、いわゆるシンギュラリティ(技術的特異点)を唱える人たちもいると教授は指摘している。


社会の異なる側面を捉えた悲観と楽観であるから必ずしも矛盾するものでもないだろう。
そう考えると、技術が社会をどんどん変化させていくというコンセンサスは動かない。
ただし、人工知能によって人の仕事を機械がやってくれるのを「楽」とするなら、それによってその人の職が奪われるのは「悲」というべきだろう。
リーマン危機からの後遺症が癒えた今、そうした変化はますます速くなるとロゴフ教授は予想する。

ロゴフ教授が有名なのは元IMFチーフ・エコノミストだからでも、元FRB理事だからでもあるまい。
(こうした事実は少々通好みすぎる。)
2009年の著書『国家は破綻する』によってであろう。
ロゴフ教授によれば、技術により経済の変化が及ぶのは雇用だけではない。

「金融危機の後遺症が消えていくにしたがい、人工知能はおそらくその牽引力を強め始め、米生産の成長トレンドは今後数年、容易に強まるだろう。
(もちろん、不況も起こりうるが。)
これに応じて起こるであろう世界的な金利上昇は、中央銀行の舵取りを難しくする。
最善のケースで、1990年代にアラン・グリーンスパンがやったことで有名な、『波に乗る』ことができるだけだ。
しかし、その場合でも今回はより高いインフレに見舞われるだろう。」

ロゴフ教授は、中央銀行も市場参加者も過去10年の低成長を今後10年について前提にすべきでないと言う。

もしも科学者が正しいなら、私たちは今後の経済成長を後悔することになろう。


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