ローレンス・サマーズ

 

サマーズ:ドル安が進む本当のワケ

ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)が、昨年来続いている米ドル安について解釈を与えている。
サマーズ氏は米経済が順調とは言えず、投資家の米ドル離れが起こった可能性があると警告する。


米10年金利は独金利より230ベーシス高く、円金利より280ベーシスも高い。
このことは、今後10年で米ドルが主要通貨に対して25%以上も下落すると市場が予想していることを示唆している。
もしも、この大きさの減価が予想されていないなら、この金利差においては投資家は自国資産よりドル資産を選好するはずだからだ。

サマーズ氏が昨年来のドル安についてFTで論じている。
サマーズ氏の分析は、10年という長い期間について金利パリティを適用するというものだ。
つい最近までドル相場が10年金利差で説明できる状態が続いていたことも影響しているのだろう。
サマーズ氏は(先渡し相場・先物相場ではなく)期待値を用いているので、理論的にはこの解釈で正しい。
名目金利を分解して、次のようにも表現している。

「米ドル安のいくらか、おそらく半分以下は、米国の予想以上のインフレで説明できる。
実質金利は、継続的な実質ベースの減価による説明を示唆している。」

すでにドルが10%下がっていることを考慮して、サマーズ氏は今後10年でのドル/ユーロの期待値があと15%程度下落したと考えられると述べている。
こうした金利差による議論は魅力的だ。
単純明快だし、理論的にも使う上でもわかりやすい。
しかし、金利差とは為替レートという結論にかなり近いところに位置する数値であり、そこに至るまで多くの物語が存在する。
その物語を見過ごしてしまうと、結論を読み違うことがありうる。
サマーズ氏も、金利差・インフレ差による説明は部分的なものにすぎないと釘を刺している。
かわりに、恐ろしい可能性に言及する。


「外国の金利上昇が米国より大きくなることを、投資資金の需要増が大きくなったものと見るのが一般的になっているとしたら。」

サマーズ氏は、経済成長の予想が上向いた欧州、変化がなかったカナダ・メキシコの両方に対して、ドルが下落した点に注目している。
将来の外国の金利上昇は、経済拡大のために投資資金が必要になるための好ましい上昇と見る見方だ。
一方、過去の米国の金利上昇は経済の改善を背景とするものではなく、ドル資金の不足によるものと考える可能性を指摘しているのである。
特に後者はドルの全面安を説明しうる考えになっている。

「金利上昇とドル安のパターンは、さまざまな角度から米資産を外国人が買ってくれるよう、あるいはアメリカ人に外国資産に多様化させないよう信用させる必要を示唆している。
このパターンは米国では比較的めずらしいものだが、ポール・ボルカーFRB議長指名前のカーター政権、ロバート・ルービンによる『強いドル』政策宣言前のクリントン政権で起こっている。」

米国・外国の投資家がドルを嫌い始めている、そうサマーズ氏は滲ませ、3つの要因を挙げている:

  • 強いドルを求めると明言しないトランプ政権の姿勢。
  • 完全雇用下での意図的な財政赤字拡大。
    「FRBの独立性、米国の伝統的な外国投資の受け入れ、ドル資産保有者への攻撃などの点で疑問が生じている。」
  • 保護貿易。
    「米株式市場全体の下げは、鉄鋼・アルミ・セクターの上げの100倍だった。
    この事実は、(保護貿易で被害を受ける)鉄鋼を使うセクターが鉄鋼を作るセクターを小さくし、関税政策のネットの効果が諸外国の報復を考慮しなくても米国の競争力を低下させてしまうことを示している。」

サマーズ氏は、トランプ政権下でのドル安について、市場が米政治・経済に対して警告を鳴らしたものと捉えている。

「世界の市場からの信頼は(失ってから)取り戻すより維持する方がはるかに容易だ。
為替市場は、米国が健全な道筋にないこととのシグナルを出している。」


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