ビル・グロス:パウエル・プットはないの?

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債券王ビル・グロス氏が、パウエルFRB議長の就任後初の議会証言についてコメントしている。
連日の米株価下落に際し、永く続いたFRBプット終焉の可能性に言及している。


パウエルは、『Amazon効果』は別として、インフレに対する趨勢的なデフレ的効果に言及しなかった。
FRBは債務、人口動態、グローバル化の影響に対処できていない。

グロス氏が昨晩ツイートした。
FRBは中央銀行でしかない。
彼らが行えるのは基本的に金融政策でしかない。
金融政策とは、基本的には経済安定化政策であり、景気の波を平準化することを目的としている。
債務問題・高齢化・グローバル化がもたらす構造的問題に対し、FRBの持つ武器は非力だ。

これら構造問題は経済にデフレ的な影響を及ぼす。
構造問題に取り組むべき主役はもちろん中央銀行ではなく政府である。
仮に本質的な解決法が十分に講じられないなら、中央銀行に課せられてきた本業以外の負担が取り払われずに続くことになる。

減税が適切かどうかとの議論はあろうが、トランプ政権が財政政策を講じたこと自体は誤りではあるまい。
米国は、経済安定化政策(平準化)の重荷をほぼすべてFRBに依存してきた。
(野党時代の共和党のやり口だ。)
ようやく、重荷の一部を連邦政府が肩代わりするプロセスに進んでいる。
だからこそFRBは今、金融政策正常化を進めることができている。
一方で、肝心の構造改革はどうかと言えば、稚拙で近視眼的な政策が目立つ。
一連の保護主義的動きはその最たるものであり、これは構造問題をむしろ悪化させると考えるべきだろう。


米共和党は財政を悪化させる天才だ。
民主党政権時には財政再建を唱えるが、共和党政権時には減税・歳出拡大を唱える。
しかし、それでも中には財政面でのタカ派が残っている。
今後この人たちが声を大きくすれば、中間選挙後のトランプ政権の議会対策は困難なものになるだろう。
つまり、これ以上の財政政策は進めにくくなる。

こうした読みは、FRBの金融政策正常化が進まないのではないかとの推測を呼ぶことになる。
FRBは今後も構造改革の援護射撃のために金融緩和的な政策を維持するのではないか。
構造問題がなかなか解決しないとすれば、金融緩和の経済への効果は鈍く、資産価格への効果は尖鋭になろう。
つまり、FRBの政策はグリーンスパン・プットの側面が目立ってしまう。

ところが、パウエル議長の証言は(少なくとも前任者との比較において)やや異なった受け取り方をされた。
グロス氏は、連日の市場の下げからパウエルFRBの方向性を占っている。

パウエル・プットはないの?
パウエルは、株式市場を支えたり落としたりするのが『FRBの仕事ではない』と言う。
もしそうなら、グリーンスパン・バーナンキ・イエレンのプットは過去のものとなる。

グリーンスパンから3代のFRB議長は30年超におよぶ米金利低下局面の一部を担ってきた。
ところが、債券市場の弱気相場入りの可能性が高まり、同時に中立派と見られてきたジェローム・パウエルがFRB議長となった。
米インフレが本格的に上昇を始め、パウエル議長はポール・ボルカーの仕事をなぞることになるのか。
それとも、構造問題の解決が不十分にとどまり、趨勢的停滞~ゴルディロックスが継続することになるのか。
グロス氏のツイートは前者に近い可能性を示唆している。


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