伊藤隆敏教授:日銀目標達成にはまだ6か月-1年かかる

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伊藤隆敏コロンビア大学教授が、新体制後の日銀の金融政策について展望している。
2%物価目標達成にはあと半年・1年かかるとのびっくり発言が飛び出した。


「メイン・シナリオは米国が徐々に利上げし金利差が広がり、円安になりやすくなるというものだった。
しかし、実際には逆のことが起こった。
これは予想外の展開だったが、まだ105円なら大きな問題ではない。」

伊藤教授がBloombergで、米金利上昇とともに進んだ円高について言及した。
ドル金利が高まれば円売りドル買いが活発になり円安ドル高が進むと見ていた人も多い。
しかし、実際にはそうはならなかった。
教授は、自身も把握していないテクニカル要因があったと推測している。
いずれにせよ現水準では経済に悪影響が起こるとは考えにくく、このまま円高が継続するのでなければ問題ないとの見解を示している。

「日銀は金利差が円安を生み、インフレが高まると考えていたのだと思う。
しかし、そうならなかった。
だから、現在のペースを維持し、イールド・カーブ・コントロールを継続するのだろう。」

伊藤教授は新体制に移行する日銀の政策を現状維持と予想している。
米国・欧州が金融引き締めに転じた過去の景気サイクルでは、日本は大きな恩恵を受けてきた。
日銀は米欧に遅れて引き締めを開始することでタイム・ラグの間、円安が進み、それが輸出を後押ししてきたのだ。
ところが、今回そのシナリオはまだ実現していない。
キャスターや記者の関心が次の一手に集まるのも当然だろう。


「日銀が今できるのはイールド・カーブ・コントロールを継続しインフレが2%に向けて上昇するのを待つことだ。
まだ6か月-1年かかるかもしれない。」

スタジオでこの回答を信じた人は1人もいなかったろう。
あと半年・1年で日本が基調的に2%物価目標を達成すると見る人は皆無に近い。
伊藤教授は、これほど早い目標達成を予想する理由を次のように説明した。

「世界、外的な状況は極めて良好で、すべての先進国経済は人手不足やインフレ上昇が始まっている。
それが日本に波及する、
今年は、すべての先進国でインフレ上昇と賃金上昇が見られる年になる。」

この説明でも納得した人はほとんどいなかったはずだ。
現時点では世界中のほとんどの人が、日銀の2%目標達成には極めて長い時間かかるか達成不可能と考えている。
それでも、日銀が現状の政策目標を維持すると言うなら、論理的な推論は追加緩和の実施しかあるまい。
しかし、伊藤教授はその可能性を自ら否定している。

(リフレ派が政策決定会合の)過半数を占めているが、現在の状況は追加緩和を正当化しないだろう。
実質側は強く、失業率は低く失業者は少なく、人手不足がかなり進んでいる。
つまり、実質側が本当に強く、名目側がやや弱い。
これは全投入すべきという状況ではないだろう。

何か伊藤教授が口にできない矛盾があるのだ。
「実質側が本当に強く、名目側がやや弱い」現状で、名目と実質の差として2%という遠い目標を維持するのは不合理だ。
しかし、そのことを伊藤教授は認めようとしない。
市場のインフレ期待のアンカーを外してはいけないと考えているからだろう。
教授の本音はリスク・シナリオの方によく表れていると感じられた。

「中心の反対側には2%をあきらめ1%目標にしようという考えがある。
そうすれば国債を大量に買わなくてすむ。」


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