レイ・ダリオ:勝とうとしてはいけない

レイ・ダリオ氏とローレンス・サマーズ氏の対談の続報。
一般の人たちにとっての投資のあり方を語っている。


あなたが(投資において)向かいあっているのはその道のプロたちであり、最善の策はポートフォリオのバランスの保ち方を学ぶことだ。
私がバランスのとれたポートフォリオと言うのは、あなたがゲームに勝つことはないからだ。

ダリオ氏は、一般の個人が何をすべきかと尋ねられ「正々堂々戦ってはいけない」と答えている。
市場で対しているのは、知識・技能を磨き、それだけをやっているプロの投資家だ。
そうした人たちと普通の個人が正面から戦っても勝ち目はないと考えているのだ。

ダリオ氏は、個人投資家が陥りやすい失敗を指摘する。

もしもあなたが(市場の混乱を)恐れているなら、あなたが誰であろうと成功できないだろう。
株式市場がX%下がった。
それで恐れるのか?
あなたは逆を行かないといけない。
おそらく恐れのない時に売るべきで、恐れのある時に買うべきなんだ。

市場の雰囲気に流されついつい順張りをしていては、いい結果は出ない。
これまで市場が順調だったなら、それはいい市場ではなく割高な市場かもしれない。
これまで悪かったなら、割安な市場かもしれない。
知識・技術のない一般投資家には、それを見分けるのは難しい。

だからこそ、一般投資家は勝つことを目指して投資してはいけない。
むしろ、バランスのとれたポートフォリオを築くことで、負けない投資に努めるべきなのだ。
ポートフォリオのバランスを一定に保とうと努力すれば、自然に「Buy low, sell high.」の逆張り戦術を実践することになる。


バランスのとれたポートフォリオを奨めた上で、ダリオ氏は月初に起こった市場の混乱の本質を解説した。
かねてからの経済を3つの要素からなるとするモデルによる解説だ。

「短期的な景気サイクルを説明するには、不況の中、金融・財政政策の刺激策が講じられていると考えるとよい。
これは時速70マイルで車を運転するようなものだ。
しかし、生産の供給力はそれより遅いスピードで拡大している。
時速70マイルで走るあなたの車の前に、時速50マイルで走る車がいると考えればよい。
それが制約になってしまい・・・、ブレーキを踏まなければいけなくなる。」

ダリオ氏は、景気サイクルの終期には、経済が活況になり、供給力の制約によって経済の頭打ちが起こると解説する。
今まさにそうであるように、さまざまな理由から経済刺激策が講じられ、供給側の制約が問題になってしまう。
そして、金利が変動するために、市場は上下しやすくなるのだと解説する。

このダリオ氏の解説はとても平凡かつ退屈なものだ。
ただし、ここで注意が必要だ。
ダリオ氏のモデルでは経済のサイクルは2つと想定されていたはずだ。

  • 債務の短期的な周期(景気サイクル)
  • 債務の長期的な周期

今回の解説で、ダリオ氏は前者の短期サイクルを用いて説明している。
つまり、現在の市場の動揺を35年に及ぶ超長期の金利低下局面の反転とは直接結びつけていないのだ。

ダリオ氏は昨年、さかんに状況が1937年に似ていると主張していた。
80年前を指していたから、かなり長期的な話であろうと推測するのが自然だった。
結果、「債務の長期的な周期」についての観察に根差す見解だろうと考えられた。
しかし、最近ではダリオ氏はこの見方を口にしない。
天才は今、何を考えているのか。
凡人の関心はそこにある。
しかし、天才はなかなかそれを明かしてはくれない。


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