レイ・ダリオ:不況を語るべき時がやってきた

Bridgewater AssociatesのRay Dalio氏は、不況到来のリスクが大きくなっていると警告した。
ダリオ氏が予想していた「市場の噴きあがり」が実現するかどうか、やや疑問を抱かせるトーンになっている。


「私たちが行っている計算では、典型的には、利益成長の加速(株式にプラス)が金利上昇(資産価格にマイナス)より速ければ、わずかに強気となる。
そして、仮に待機資金が潤沢に存在するなら(それは存在する)、それは株価を最後に一上げする。
これは債券にはマイナス(金利上昇)であり、FRBの引き締めにつながり、典型的なピークを形成する。」

ダリオ氏は自身のSNS10日前の自社の相場観を明かしている。
景気の短期サイクルの終期でありながら株価上昇を予想していた背景には、実に精緻なファクト・ベースによる景気循環への知見があった。

マーケット・タイミング戦略は持続不可能というのが学術的バックボーンを有する投資入門講座の主たるメッセージの1つとなる。
しかし、そうした戦略を採る投資家に巧拙の差が大きいならば、本当に巧みなマーケット・タイミングが成功しないと言い切れるだろうか。
計数モデルを駆使して史上最高のヘッジ・ファンドとなったダリオ氏にはそう思わせるところがある。

そのダリオ氏が、景気サイクルにおける現在の位置をファイン・チューニングしている。
財政刺激策、賃金上昇、それによる金利上昇、インフラ支出と財政赤字拡大がダリオ氏の考えを変えさせたようだ。

「(経済の)供給力制限を解消するために有益なものを阻害する要因が多々存在する。
結果、市場は名目金利を上昇させる。
これに対するFRBの対処や(インフレ調整後の)実質金利上昇の程度が極めて重要で、大いに注視したい。」


米10年債(青)・10年物価連動債(赤)の利回りとブレークイーブン・インフレ率(緑)
米10年債利回り(青)、米TIPS(赤)、米BEI(緑)

ダリオ氏によれば、サイクルのこの時期、中央銀行が適切な金融政策をとり続けるのは極めて難しくなるのだという。
引き締めの手が緩すぎれば物価や資産価格の行き過ぎを招く一方、引き締めが強すぎれば景気をオーバーキルしてしまう。
結果論で言えば、金融引き締め後多くのケースで景気が後退局面に入ってしまう。

「今後18-24か月のうちに不況入りするリスクが高まっている。
ほとんどの市場参加者は強い2018年に注目しているが、私たちは2019-20年に注目している。
率直なところ、不況の確率や次の選挙前の不況がどのようなものになるかを語らないのは、不適切な過失であると思う。」

ダリオ氏は今月2月1日から8日までの1週間に欧州株のショートを急増させ市場を震え上がらせた。
わずか1週間の間にショートを約1兆円相当も増大させ、8日付EUあて報告書では44銘柄131億ドル(約1.4兆円)とされている。
世界市場のピークはまだ少し先にあるとしていた直前のスタンスを改め、一部で下落または相対的アンダーパフォームが始まると読んでのことだろう。

不況の足音を聞く中、ダリオ氏は2つの心配を抱く。

  1. 格差拡大とその社会・政治への波及
  2. 次の不況で中央銀行が採りうる手段・規模が限られている

ダリオ氏は心配する一方で、過去の「バブル後」と比べれば状況は悪くないとも添えている。
ただし、状況は悪くなくとも、その社会・政治への波及はむしろ大きくなる可能性があるとも語っている。

「(企業・金融機関・投資家・個人の)莫大な現金保有は、市場・政府による過剰債務の制御とともに、市場・経済の脆弱性を過去の深刻なバブル後と比べて小さなものにしてくれる点を再度強調しておきたい。」


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