日本銀行

 

池尾和人教授:白い日銀、黒い日銀、豹柄の日銀

慶応義塾大学 池尾和人教授が、長く続く異次元緩和を厳しく批判した。
日銀は金融政策をゼロ金利政策に戻し、政府は財政再建に取り組むべきと主張した。


「黒田さんは君子だと思うので、豹変してほしい。」

「私は異次元緩和策には反対だ。」

朝日新聞に話した池尾教授の異次元緩和評は厳しい。
2013年4月に異次元緩和がスタートした3か月後の7月、池尾教授は『連続講義・デフレと経済政策』というアベノミクス解説本を上梓している。
諸施策のいい面・悪い面をスクエアに論じており、当時としては同分野の決定版とも言うべき内容だった。
そして、その後の4年半は、池尾教授の予想が1つ1つ実現していく4年半となった。
ひとつ想定外だったと言えば、当初2年との約束で始まった実験的政策がその倍以上がたった今も続いている点だろう。
そんなこともあってか、今の池尾教授の異次元緩和評が厳しくなったのかもしれない。

実験のはずだったのに

「(金融緩和の局面での)金融政策は、政策金利をゼロまで引き下げたところが限界で、それに上乗せして量的緩和などをしても追加の効果は乏しい。
想定される副作用と比較すると、やる意義はあまりないのではないか」


今回のインタビュー記事を読む限り、池尾教授は当初から異次元緩和の効果が乏しいと予想していた様子が見てとれる。
それでも「民主主義は経験からしか学べないところもある」と達観し「一度は異次元緩和をやらざるを得なかった」と振り返っている。
異次元緩和スタートの前年まで、日本経済は(循環的に)極めて暗い時期を迎えていた。
前政権の不作為もあったかもしれないが、伝統的な政策手段のスコープでは万策尽きた感もあった。
だから、非伝統的政策の社会実験をやるという考えはありうる。
何より、その社会実験は民主主義のルールに則って始まったのだから、それを悪とするわけにはいかない。

ただ、実験の結果が不十分だっただけなのだ。
それなのに今、問題はそれを超えて大きくなる可能性がある。
日銀が冷静に自省できず、先行きの政策のスペースが狭小になってしまう危険性だ。
池尾教授が「豹変してほしい」と願うのは、そうした焦りからだろう。

ゼロ金利政策への回帰を

池尾教授は、現状の「大規模な金融緩和」には効果がないと考えているから、それを終わらせてゼロ金利政策に戻すよう説いている。
これはアグレッシブな引き締め論のようにも聞こえるが、そうでないようにも聞こえる。

  • マイナス金利政策(超過準備の一部に-0.1%)をゼロ%に戻すというなら引き締めだ。
  • 長期金利ターゲットは現状ゼロ%だから、その意味ならば据え置きだ。

池尾教授は異次元緩和に反対しているが、そこで見直せという幅は、短期金利にしてわずか0.1%でしかない。
そもそも不評なマイナス金利だから、これを止めることがどれほど経済を冷やすだろうか。
いずれにせよ、もはや金融政策について採りうる政策スペースは、リフレ派も反リフレ派も現実的にはほとんど同じなのだろう。

(次ページ: 財政リスク顕在化は2020年代か)


ページ: 1 2

 - 国内経済, 政治 ,