ロバート・シラー:債券が選択肢になった

資産価格の実証的研究で2013年ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授は、経済・市場のナラティブが今変化しつつあると観察している。
住宅市場・株式市場は、金利上昇の影響を逃れえないと話している。


「金利は明らかに大きな要因だ。
金利は時間の値段だ。
金利は経済の基本的な要因で、みんな注視している。」

最近の金利上昇の住宅市場への影響を尋ねられ、シラー教授はFox Businessに答えた。
米長期金利と住宅ローン金利は連動性が高い。

米住宅価格(青、左)、長期金利(赤、右)、住宅ローン金利(緑、右)
米住宅価格(青、左)、長期金利(赤、右)、住宅ローン金利(緑、右)

足元の長期金利上昇が続くなら、住宅ローン金利も上昇すると予想される。
当初こそ金利上昇を予想する駆け込み需要もあるかもしれないが、それも終われば住宅市場に悪影響が及びかねない。
住宅価格に先安観が出る中で、住宅ローン金利が上昇するなら、この影響は強力だ。

シラー教授は、住宅ローン金利を見る上で重要なのは将来のインフレがどの程度で推移するのかだという。

「6%の住宅ローン金利は、もしもインフレがないならば、かなり高い金利だ。
過去はそうした(名目)金利があったのだが、その頃は相応のインフレが起こっていた。
私たちは慣れっこになって、インフレのことを忘れてしまった。」


現状の米住宅ローン金利(30年固定)の平均は4%強、インフレが2%弱とすれば、実質金利は2%強である。
過去と比べれば、まだ低い水準だ。
名目金利が上昇すれば債務者にとって見かけの負担は増える。
しかし、それがインフレによるものなら心配は小さい。
その分、住宅価格の上昇でカバーできると期待されるからだ。
ところが、実質金利の上昇であれば、それは債務者の負担増そのものになる。

シラー教授は、債券利回りの上昇によって市場に新たなナラティブ(物語)が生まれようとしていると言う。

たくさんの人が株式が高くなりすぎたと感じているが、他に選択肢があるか?
債券市場に投資してもいいリターンは得られなかった。

教授の解説は、過去の多くの投資家の思いを代弁している。
株は高いが他に選択肢があるわけでもなく、投資家は究極の選択を迫られてきたのだ。

ジェフリー・ガンドラック氏は年初、米2年債利回りがわずか4か月の間に70ベーシス上昇しついにS&P 500指数の配当利回りを超えたと指摘している。
これは、投資家にとって極めて大きな出来事だった。

株が高値を試し続けるにつれ、多くの投資家は下落を心配するようになる。
一部を他の資産クラスに退避させたいと考えるが、退避させる先が見つからない。
かと言って現金で持てば、何のリターンを生むこともなく、まさに死に錢だ。
ところが、今、2年債利回りが株式の配当利回りを超えた。
株価下落のリスクを一部ヘッジするために、株式を売却して2年債を買うというやり方は理に適っている。
10年債なら金利上昇時に大きな価格下落を被りかねないが、2年債ならそれも限定的だ。

今、米市場で起こっているのは、おそらく投資家のこういう葛藤なのだろう。


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