ジェレミー・シーゲル:生産性向上なき賃金上昇

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ウォートンの魔術師 ジェレミー・シーゲル教授が、連日の米市場の下落について弱気相場入りではないと話した。
そう言いながらも、今年の相場は昨年よりはるかに厳しい環境に置かれていると指摘している。

「これが弱気相場だとは思わないが、調整、つまり10%下落である可能性はある。
それでも、大統領選以降40%のリターンだったから、10%下落しても投資家にとって大惨事ではない。」


シーゲル教授はCNBCで、5%程度の下げなど小さなものと指摘した。
その程度の下げは年2-3回あるのが普通だったが、このところ起こっていなかった。
投資家は当たり前のことに過剰に反応していると言いたげだ。

市場にはあまりにも多くの順張りプレーヤーがいる。

シーゲル教授は、一本調子の上げの原因を一部の投機的な参加者によるものと分析する。
順張りのプレーヤーが上昇を過熱させてきたと振り返る。
教授は、市場が一方方向(それが上にでも下にでも)に進むことが最もよくないことと話す。
市場参加者に根拠のない思い込みを植えつけてしまうからだ。

「みんな『簡単にお金が儲かる』と思い込んでしまう。
12月に蔓延したビットコイン哲学のようなものだ。
そうしたことは市場にとってよくない。」

この意味で、教授は今回の下落を歓迎しているようにさえ見える。

「市場は変動し、簡単にはお金は儲からない。
もしも投機家を市場から追い出したら、市場は健全になると思う。
それが損失だとは思わない。」


気持ちは理解するが、こうした投機家のいない市場に魅力があるだろうか。
流動性は失われ、市場参加者の数も幅も大きく減じてしまうのではないか。
とりわけバリュー投資家にとっては、投機家が全体として残す損失は、市場の肥やしそのものだ。
理屈のない投機家が出す損失を、理屈に頼るバリュー投資家が刈り取るのが理想的な市場の構図だろう。

シーゲル教授は2018年が多難な年になると予想してきた。
株式リターンとして控えめな0-10%を予想している。
インフレ上昇に背中を押された金利上昇が逆風になるという。

「もしも賃金が生産性向上によって上昇するならすばらしい。
何よりすばらしい。
しかし、前四半期の生産性の数字はそれほど高くない。
賃金が上昇し生産性が向上しないなら、単位労働コストが上がり、企業にとってコスト上昇圧力になる。」

コモディティ価格の底堅さ、歴史的に低い失業率などはインフレ上昇の素地となる。
インフレが上昇すれば名目金利が上昇し、株価の低下要因だ。
もちろん、それを打ち消すだけの企業収益の改善があれば問題ない。
しかし、今期の企業収益の改善には減税による前倒し効果という一時要因も入っているはずとシーゲル教授は注意を促している。
金利上昇を打ち消すだけの継続的な利益水準の改善が起こるのかが株価の先行きを決める。


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