ビル・グロス:ドル安・緩やかな金利上昇のワケ

債券王ビル・グロス氏が、米ドル安の継続を予想した。
また、従来通り緩やかな長期金利上昇を予想し、その理由を明かしている。

「過去12か月、米ドルは他通貨に比べ10%下落した。
財政赤字がもしも1兆ドルになるとすれば、米ドルを保有する投資家には脅威になる。」


ビル・グロス氏はBloombergで、財政悪化がドル安継続を示唆していると語った。
トランプ政権と共和党が推し進めた減税には財源が十分にともなわなかった。
長年、双子の赤字を問題視してきた米国が、片方の赤字を自ら増やそうとしている。
しかも、完全雇用に近い中での財政政策は、少なくとも短期的には輸入を増やし、もう片方の赤字まで増やす要因となる。
トランプ大統領は一般教書演説で、さらに大型の財政政策を打つとぶち上げたばかりだ。

一般教書演説で示されたインフラ支出に注目したい。
仮にそれがなくても、1兆ドルの財政赤字になるなら、ドル高ではなくドル安をおそらく予想すべきだろう。

ボラティリティの動向について尋ねられると、グロス氏は株式・債券ともに低い水準にあるため上昇が予想されるとコメントした。
しかし、FRBによる市場のコントロールは続き、ボラティリティ急騰などは予想されないという。
グロス氏は年内の利上げを1-2回と予想している。

CNBCではあらためて債券の弱気相場入りを宣言している。

「強気相場は終わった。
『緩やかな弱気相場』がやってきた。」


この宣言にともない、現在約2.7%の米長期金利が来年3%前後になると予想している。

「10年金利が3%になれば、インカムで2.7%を得て、価格で3ポイントを失い、プラスマイナス・ゼロだ。
私にとっては、これは『穏やかな弱気相場』だ。」

グロス氏は、再び「ミンスキー・モーメントやリーマン・カタストロフィー」が起こる可能性を否定しなかったが、可能性は極めて低いと言う。
1つには、FRBが適切な対処を行うと予想されること。
2つ目は、5%近い名目GDP成長率に対し長期金利が十分に低く、金融環境は依然かなり緩和的に保たれていることを挙げた。

グロス氏は最近まで市場が心配してきたイールド・カーブ逆ざや化について、可能性は小さいという。
むしろ、財政悪化により米国債増発が予想されるため、期間プレミアムが拡大しやすくなるからだ。
しかし、安心してはいけない。
これは、もっと深刻な状況を示唆するものかもしれないからだ。

「問題は《誰がこの米国債を買ってくれるのか》に変わった。
過去は中央銀行が買っていた。・・・
5,000-7,000億ドルもの米国債を誰が買うのか。」

双子の赤字を拡大させる国の国債をいつまでも外国の投資家は買い続けるのか。
仮に、米ドル安のトレンドが鮮明になればなおさらだ。
かといって、米家計は貯蓄率を低下させ、借金して消費に勤しむありさまだ。
こうした暗い要因が多い中で、なぜグロス氏は「穏やかな弱気相場」を予想するのか。

「金利が上がったら、市民に買うよう誘導すべきだ。
それが私が『穏やかな弱気相場』を予想する理由だ。」

つまり「緩やか」じゃないと米経済が成り立たないから「穏やか」と予想しているにすぎないのだ。


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