リチャード・クー氏:商業用不動産に要注意

野村総研のリチャード・クー氏が、量的緩和の巻き戻しが経済・市場の混乱を招く可能性を指摘した。
商業用不動産など資産価格の上昇を放置すれば、リーマン危機の二の舞になりかねないと言う。


「量的緩和の巻き戻しがいまだ試練だ。
経験したことがなくそれを進めているため、今後どこかで何か問題が起きる可能性がある。
もちろん問題が起こらないことを願っているが、そうした話が多く語られている。」

クー氏が印ETから現在最大のリスクを尋ねられ答えたのは金融政策の正常化だった。

クー氏は先進国経済が回復したとしながらもバランスシート不況から完全には抜けきっていないと語る。
民間セクターが過去のトラウマ等から、いまだにゼロ金利/低金利でもお金を借りないためだ。
民間が借りないなら、それを誰かが代行するしかない。
クー氏は日本の消費増税を悪例として挙げた上で、経済が依然として財政刺激策を必要としていると主張した。
ただし、米減税については諸手を挙げて賛成しているわけではない。

「米民間セクターは現在これほど低金利でも全体としてはお金を借りていない。
そこに減税しても、減税分のいくらかは貯蓄に回ってしまう。
・・・
政府が支出をすればそれはGDPに加算されるが、減税は間接的だ。」

また、企業が投資をしなければ労働生産性は向上せず、それが格差拡大を助長しかねないと指摘した。
こうした問題はありながらも、減税はそれなりの効果があると期待されており、足元の経済成長も高まっている。
米経済が噴きあがる兆しを見せる中、ジェローム・パウエル氏率いる新FRBはどういった政策を進めるだろう。


「米インフレ率はいまだ低いが、資産価格、商業用不動産価格は天に昇るほど高く、前回高値よりもはるかに高い。
だから、FRBはなるべく速く金融政策正常化を進めなければいけない。
おそらく、現状の路線が続くだろう。」

金融政策正常化が続くなら、次に心配になるのは、このところ市場を脅かしている債券相場だろう。
クー氏は債券の弱気相場入りは十分ありうることと言う。
人々が金融政策正常化の意味を理解していくにしたがい、状況は変わっていくだろうと言う。

「(FRB保有の米国債が償還を迎えると)米政府はFRBに償還金を支払うため借換債を発行して民間セクターから資金を吸い上げる必要がある。
・・・
実質的に(この借換債は)ニュー・マネーの債券だ。」

財源をともなわない減税は米国債の供給増要因だ。
そして、FRBのバランスシート縮小は需要減要因だ。

「米政府の財政赤字は倍増する。
これは金利上昇圧力になるだろうから、債券市場がこの先とても順調にいくとは思わない。」

クー氏は、皆がこの構図に気づくにつれ債券市場、そして株式市場に影響が及ぶだろうと言う。
これは経済成長による金利上昇ではなく、金融・財政政策による金利上昇だから、株式・債券市場から見れば明らかに逆風だ。
クー氏は、この逆風に対してFRBは大きくは反応しないだろうという。

しかし、これは基本的にFRBがやりたいことだ。
FRBは資産価格・商業用不動産価格の上昇継続を望んでいないだろう。
もしも継続すれば、いつかこれが弾け、2008年からやり直しになる。

クー氏は、サブプライム/リーマン危機前と比べて(商業用不動産を除き)レバレッジが高まっていないため、状況は前回ほどは悪くないと付け加えた。


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