イールド・カーブのフラット化はリスクでない?

ミネアポリス連銀Neel Kashkari総裁は、性急な利上げが長期金利上昇の阻害要因となりかねないと話した。
結果、米イールド・カーブのフラット化が懸念され、それこそ先週のFOMCで利上げに反対した理由なのだという。


(利上げで)インフレ期待を押し下げることでイールド・カーブの長期側が低下する可能性がある。

カシュカリ総裁がイールド・カーブのフラット化の一因を語ったとReuters他が伝えた。
利上げ期に長期金利が上昇しない現象は2004-05年の『グリーンスパンの謎』からクローズ・アップされてきた。
FF金利引き上げがイールド・カーブの短期側を押し上げても、イールド・カーブの長期側に波及しない。
結果、カーブがフラットになり逆ざやになり、不況・資産価格下落の前兆になっていく。
今回の利上げ期でも、最近の急激な10年-2年スプレッドの縮小が注目を集めている。

米10年債(青)・2年債(赤)利回りと10年-2年スプレッド(緑)
米10年債(青)・2年債(赤)利回りと10年-2年スプレッド(緑)


今回のフラット化が前回と異なるのは、FRBのバランスシート正常化が同時進行していることだ。
FF金利引き上げは短期側を押し上げ、カーブのフラット化につながる。
バランスシート縮小は長期側を押し上げ、カーブをスティープ化する、はずだった。
FRBが長期国債への再投資を減らしていけば、中長期レンジでの米国債需要が軟化し中長期金利は上昇する、はずだった。
ところが長期国債への需要が旺盛なためこれが起こらない。
これには海外マネーの買い、長期資金需要の不振、リスク・オフの受け皿などの理由が考えられる。
海外マネーの要因を除けば、先行きの米経済・市場への弱気な見方を指し示している。

フラット化の解釈についてはFRB内でも見方が大きく分かれている。
イールド・カーブへの警戒はダラス連銀Robert Kaplan総裁、セントルイス連銀James Bullard総裁も言及している。
一方、退任を控えたジャネット・イエレンFRB議長は楽観論を語っている。

過去イールド・カーブが逆ざや化した時には、長期にわたる短期金利の期待値平均より短期金利がかなり上にあった。
それは典型的には金融政策が引き締め的、極めて引き締め的であることを意味している。

FRB議長としての最後の記者会見でのイエレン議長の解釈をBloombergが伝えている。
現在のFRB金融政策は引き締め的というのからは程遠い。
だから、過去の同様の状況とは異なると言いたいのだ。

イエレン議長が根拠に挙げるのはマイナス圏にとどまった期間プレミアムだ。
マイナスの期間プレミアムが長期金利を低位にとどめている。
また、低い期間プレミアムは将来の金利上昇リスクが小さいことも示唆している。
議長は市場参加者が景気後退を予想していないとした上で「その判断に同意する」と話した。

イエレン議長はイールド・カーブ逆ざや化の後に景気後退が起こる現象については認めている。
しかし、それは「相関であって因果関係ではない」との見解だ。
ただし、金融政策正常化のさじ加減を誤れば、たちまちイールド・カーブは逆ざや化し、相関が因果関係に戻りかねないという。


 - 海外経済 , ,