レイ・ダリオ氏のBloombergインタビュー第2弾: 債務増大・マネタイゼーションの時代に投資すべき対象のヒントが述べられている。
「資産価格とは、(現在)ゼロに近いリスクフリー・リターンとリスク・プレミアムの和に相当する。・・・
マネーはリターンを得ることで競合している。
リスク・プレミアムはいくらか、あるいは株式が現金との比較で上げる期待超過リターンはいくらかと考え、投資家は資産を買う。」
いつものようにダリオ氏のちょっと癖の強い《ファイナンス101》の講義が始まった。
異なる資産クラスは(理論上)リスクフリー・リターンへの上乗せ利回り(リスク・プレミアム)とリスク要因が釣り合うように価格が決まる。
ダリオ氏は、コロナ・ショックで起こりうることを例で説明する。
「その数字が例えば4%から2%になったとしよう。
PERはその逆数になるから、この例では需要によってPERが20-25倍から40-50倍になることになる。」
ダリオ氏の例は数値が精緻に設定されていない。
好意的に補足してみよう。
仮に、コロナ・ショック前後で、リスクフリー・リターンが0-1%から0-0.5%へ、リスク・プレミアムが4%から2%になったとしよう。
割引率は4-5%から2-2.5%へ下がったことになる。
この逆数をとると、20-25倍から40-50倍へのバリュエーションの拡大となる。
これはありそうにないように見え、みんな高値に驚くだろう。
でも、ゼロ金利に比べればありそうにないとは言えない。
確かに、ゼロ金利に比べれば、PER 50倍はありそうな話だったろう。
それを認めるとしても、仮にPERが50倍になれば、バブルがコンセンサスになるはずだ。
前提となるリスクフリー・リターン、リスク・プレミアムが持続可能でないと考えられるからだ。
ただ、今後しばらくについて言うなら、例えば25倍が割高なのかは、理論的証明は難しいのではないか。
ダリオ氏は、従来と同じような感覚でバリュエーションを見ることが難しくなっていると指摘する。
「リスク・プレミアムは流動性供給量で動かされる。
株価倍率は伝統的な方法で参考にされるべきでない。
理解しないといけないのは、実体経済が資本市場を動かすより、資本市場が経済・PER・リスクプレミアムを動かす面の方が大きいということだ。」
つまり、資本市場のV字回復の可否を占うには、実体経済のV字回復の可否より資本市場での出来事に注目すべきと言っているのだ。
中央銀行がマイナスの実質金利誘導と貨幣増発を行うと、投資家は「良い富の保蔵手段」への移動に努めるようになる。
ダリオ氏は、伝統的に「良い富の保蔵手段」とは「景気敏感でないある種の株」と金だったと指摘する。
ダリオ氏は、現在と似た決断がなされた過去の事例をいくつか挙げている。
1933年3月のルーズベルト、1971年8月15日のニクソン、2008年のTARPとQE、2012年のドラギ。
貨幣を増発し、金融資産を買入れ、政府に貸し付け、政府が困窮する人たちやお金を必要とする人・企業にお金をバラまくという決断、プロセスが、歴史上何度も繰り返し起こってきた。・・・
財・サービスのインフレのことは別として、リスク・プレミアムが圧縮され、流動性がシステムに供給され、リターンを得るための競合が起こるにつれ、まず金融資産にインフレが起こるということだ。