NAFTAで米国が輸出した意外なもの

米国はメキシコやカナダに対して意外なものを輸出していた。
かつてIMFチーフ・エコノミストを務めた広角の経済学者、ハーバード大学Kenneth Rogoff教授が、興味深い視点から米国との貿易交渉を論じている。


現在の米政権がオバマ時代の政策を撤廃するのにまだ忙しい中、肥満対策を検討するというのは空想にすぎないだろう。
これこそ米国との新たな貿易交渉に入ろうとする国々が、肥満との戦いに関し手足を縛ることになりかねない条項について用心すべきなおさらの理由なのだ。

ロゴフ教授は米社会の肥満の問題、そのFTA相手国への波及について警鐘を鳴らしている。
トランプ大統領が日本と(TPPではなく)2国間交渉を望む今、これは他人事ではない。

オバマ前大統領は積極的に肥満の問題に取り込んできた。
それが健康の問題であるとともに、ヘルスケア制度のコストに直結する重大問題だからだ。
ところが、そうした問題についてトランプ政権が関心を持っているという話は聞かない。
ヘルスケアに関わる政権の関心事とは、ただただ給付を減らすことでしかない。


ロゴフ教授は米疾病管理センターの衝撃的な推計を紹介している。
BMI値が30以上(25ではない)と定義した肥満の比率は全アメリカ人の実に40%に上り、そのうち2割は若年層(12-19歳)なのだという。
これがアメリカ人の健康を害する要因となっている。

肥満対策は政府と一部業界との宣伝合戦・権力闘争だ。
政府が国民の健康を守ろうと肥満解消に努める一方で、加工食品・ファストフード業界は宣伝やロビイングを通して政府の努力を無にしようとする。
そして、ことは国内問題にとどまらない。
ロゴフ教授はNAFTA発効でメキシコやカナダに起こった変化を紹介する。

  • メキシコ: NAFTA後、成人の肥満率が上昇した。
    加工食品のFDIや宣伝の増加が一因という。
    「メキシコでの加糖飲料の消費は1993年と2014年の間に3倍近くになり、加糖飲料への新たな税もその後の需要をわずかに抑えたにすぎない。」
  • カナダ: 果糖の価格下落が一因となり、肥満率が上昇した。

ドキュメンタリー映画『スーパーサイズ・ミー』を思い起こすような出来事だ。
米国とは恐ろしい国だ。
貿易交渉において自国の一部産業に有利な規制を押し付け、ついには肥満まで輸出してしまうのだ。


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