米ドル

 

FRB利下げサイクルは円高ドル安?円安ドル高?:ロイター

先週のReuters記事に興味深いものがあった。
「米利下げなら円高」というパターンは絶対ではないというものだ。


過去の米連続利下げ局面と、ドル/円の関係を振り返っても、利下げとドル安/円高は必ずしも直結していない。
89年以降、FRBが連続利下げを実施した5回中、ドル/円が下落したのは3回だけ。95年と2001年はともに上昇している。

これがReuters記事の主たる主張だ。
念のためチャートで振り返っておこう。

ドル円(青、左)と実効FF金利(赤、右)
ドル円(青、左)と実効FF金利(赤、右)

なるほど5回中2回は上昇していると読める。
ただし、この2回には特殊要因もある。

  • 1995年: 米政権による口先介入により未曽有の円高ドル安が進み、ローレンス・サマーズ・榊原英資 両氏の活躍で相場反転となった時期。
  • 2001年: 日本が最初の量的緩和策に取り組み始めた時期。

こう考えると、やはりメイン・シナリオは円高シナリオになるのではないか。
特にこの数十年で為替の決定要因に変化が起こった可能性もある。
貿易・経常収支から金利差という変化だ。
そうだとすれば、今最も注目すべきは前2回の利下げサイクルであろう。
リーマン危機時は円高ドル安、ITバブル崩壊時には日本側に特殊要因があったとすれば、やはり円高をメインに考えざるをえない。


とは言っても、Reuters記事の問題提起は有益なものだし、その主張も否定されたわけではない。
煎じ詰めれば、為替相場には様々な決定要因があるということだ。
次回にも何か特殊要因が発生しないとも限らない。

また、この記事が印象に残るのには複数の興味深い市場関係者のコメントを載せている点にある。
みずほ証券の山本雅文氏のコメントはこうだ。

「金融緩和の波及経路である金利は、各国とも低下余地が乏しく、相次ぐハト派化で通貨安も進みづらい。
しかし、株高を通じた資産効果チャネルが、働く可能性は残されている。
株高は投資家のリスクテイク姿勢の強まりを通じ、円など低金利通貨の下落要因となる」

FRBがアグレッシブな金融緩和を行った結果、米資産価格が上向く、あるいはそう期待されると、リターンを求めて円からドルへのキャリーが進む可能性があるという指摘だろう。
ここからさらに資産価格が上昇する余地がどれほどあるかは見通しにくいが、例えばFRBが死に物狂いで日銀をまね株式ETFを買い入れるようなことになれば、全くありえない話でもないだろう。

また、記事では「外銀幹部」の話も載せている。

「リスク回避で円が買われるのは、その前にリスクオンで円が売られていたためだ。
最近はリスクオンの円売りが進まないので、リスク回避になっても買う円がない。」

シカゴ投機筋ポジションの円売り規模はリーマン危機時の1/3程度だという。
巻き戻しが起こっても当時ほどの動きにはならないとの見立てだ。

また、FOMCドット・チャートが示す近時の利下げが利下げサイクルではなく「保険的利下げ」にすぎない可能性も多分に残されている。
それなのに先物市場はすでに2-3回分の利下げを織り込んでいる。
この織り込みから為替市場が完全に分断されているとは考えにくい。
サプライズとなれば、典型的な「Buy the rumor, sell the facts.」となる可能性も忘れてはいけないだろう。


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