グッゲンハイム
 

FRB利下げが事態を悪化させる:グッゲンハイム

Guggenheim Partnersのスコット・マイナード氏が、FRBの金融緩和スタンスを批判している。
FRB理事にと白羽の矢が立ちながら選に漏れた理由がよくわかるほどの正論である。


FRBは再び貨幣の高血糖を引き起こそうとしているが、それが、生産を阻害し物価を抑制する強力な人口動態上の力により生み出された、背景にある構造問題の対処となることはない。
ほぼすべての指標からいって、中央銀行は、迫りくる生産の限界による潜在的な経済過熱を予期し、むしろ利上げすべきだ。

マイナード氏が30-31日のFOMCの直前、レポートに書いている。
今回のFOMCでは25 bpの利上げが行われるというのが市場のコンセンサスだ。
経済はさほど悪くないのに、FRBに限らず利下げばかりが求められていることにマイナード氏は憤っている。
同氏は、今回の25 bpの利下げの後、年末までさらに50 bpの利下げが行われると予想している。

利下げを批判するのは決してマイナード氏だけではない。
労働市場は完全雇用の状態にあり、インフレこそ2%に届かないが決して急低下の恐れがあるわけでもない。
それなのに市場におもねるように金融緩和の声が世間を圧倒する。
昨年まで金融政策正常化一辺倒だったFRBが大きな環境変化もないのにスタンスを逆転させることに何の疑問も呈さない。
(確かに市場は(弱気相場入りでなく)調整したが、その後再び史上最高値を追っている。)
保険的とか予防的とかいう名目でただただ拡張的な政策が望まれてしまう。

マイナード氏は、景気サイクルの終期における金融緩和の問題点をいくつか挙げている。
同氏が明示した問題点を超えて、深刻なリスクとなりかねないものだ。


  • 資産価格のさらなる上昇とバブル発生、金融の不安定化
    サイクル終期の金融緩和は《最後のひと上げ》を増幅する要因になる。
    市場のベテランならすぐに1998年の保険的利下げを思い出すはずだ。
    アラン・グリーンスパン議長(当時)が行ったこの利下げはアジア通貨危機の不確実性を回避するのには役立ったが、2000年のドットコム・バブルの一因となった。
  • 景気後退期の利下げ余地
    いつかは景気後退がやってくる。
    今利下げすれば、その時の利下げ余地が小さくなる。
    利下げしてインフレを上昇させれば実質金利が下がるからよいとの主張は一方的だ。
    そのために名目金利を下げているのだから、同時に実質金利の下げ要因となっているのだ。
    (ワラス中立性のようなバランス感覚に立てば《行って来い》と考えるのは第一歩ではないか。)
  • 米国債利回りがマイナスに
    次の景気後退期にFRB利下げ余地が小さく、再び量的緩和が行われるなら、米国債利回りが短期のみでなくマイナスに沈むことも想定せざるをえない。
    世界から借金をする宿命にある基軸通貨国の国債利回りがマイナスになることの意味は、日本などのそれと比べても大きいかもしれない。
  • 金融緩和の出口
    「世界的なマイナス金利への感染を回避するために、FRBは意図的に米経済を過熱させ、インフレを2%目標より上にしようと試みている。
    一たびインフレが定まっていない率、おそらく2.5%に達すれば、FRBは方向を変え、今私たちが予想しているより高い水準まで利上げするだろう。
    これは別のリスクを生み出すはずだ。」

マイナード氏は、根本的な問題解決の方法が間違っているという。
経済の潜在成長率が低下し、自然利子率が下がり、金利水準が下がったからゼロ金利までの距離が縮まり、利下げ幅が稼げなくなった。
だから、金融緩和でインフレを高めて実質金利を押し下げようとする。
しかし、このロジックを見ても、インフレは根本的な原因ではなく、ある提案された解決法の材料にすぎない。
しかも、インフレを醸成するための金融緩和には副作用が大きい。

供給側の投入増加や若年層の増加加速なしには、実質自然利子率は低位のままで、もしかしたらマイナス圏に落ちてしまうかもしれない。
自然利子率が押し下げられた状態では、かなり高いインフレと金融不安定のリスクを冒すことなく中央銀行が需要を刺激することができなくなる。

マイナード氏は、景気後退を避けマイナス金利を回避するには金融政策ではなく構造改革が必要と説く。
すでに完全雇用の状態にあり供給制約が生じつつある中で、需要を刺激する必要はないからだ。
そのためには教育・訓練など供給力を増やす政策が必要だとし、短期的に効果を発揮するやり方として適切な移民政策を挙げている。
よく管理された外国人労働者受け入れによりすぐさま経済鈍化が和らぐと指摘している。

FRBの予想される予防的利下げという現在の政策は、資産価格を持続不可能なほど押し上げ、金融の不安定を高める。
これは次の停滞期を悪化させるだけだ。
米国が現在の政策を継続するなら、FRBによる短期的な景気後退回避のための措置とマイナス金利によって結局は病巣が悪化してしまうだろう。


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