ブリッジウォーター・アソシエイツのグレッグ・ジェンセン氏は、金融市場に「流動性の穴」が出現していない理由を解説し、今、重要な岐路に面していると警告している。
お金が(短期債などを含む広義の)キャッシュに殺到した。
キャッシュやミューチュアルファンドへのお金の流れが私たちの想定を超えていた。・・・
流動性がとても多く存在し、お金はキャッシュだけでなく株式にも流入したため、債券が少し売られて株式が大きく上昇し、リスク資産全般が高パフォーマンスだった。
ジェンセン氏が2日、自社のポッドキャストで読み違いの理由を説明した。
同氏はもっと早く金融引き締めの悪影響が及ぶと予想していたが、今日に至るまで米経済は力強く市場も堅調だ。
金融引き締めで起こるはずの貯蓄率上昇や負の資産効果が通常より見られていないという。
ジェンセン氏は先月にも読み違いの理由を語っているが、今回はより分析的な内容になっている。
主眼は、なぜ金融引き締めでも流動性が細らなかったのかだ。
同氏は、こうした現象が過去の歴史ではほとんど見られなかったと回顧した。
では、なぜ《今回は違った》のか。
それは、米財務省の債務発行計画に理由があった。
「FRBがバランスシートの中身の入れ替えをする度、(保有)国債は債券でなく米財務省短期証券(Tビル)で置き換えられていった。
連邦政府は大きな財政赤字で、さらに財政赤字を膨らませている。
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政府はかなり一定の発行総額を維持し、債務が借り換えになると発行総額を一定にしたが、ネットの発行額は減少した。
債券のネットの発行額が減少した理由は、あるはずの資金需要、QTの力学、引き締め効果より財務省のスケジュールが遅らされたためだ。
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かわりにTビル発行が増えたが、Tビルの発行のほとんどは用意されていた大規模なレポ・ファシリティーで吸収された。」
ジェンセン氏は、財務省が金融市場に何らかの働きかけをしようと意図したものではないと見る。
むしろ、市場に影響を及ばないように発行計画を組んだのだと推測する。
ところが、それが結果的に国債発行を抑制し、かわりにTビル発行を選択させた。
そのTビルはFRBの金融調節で消化されたため、大きな金利上昇を招かなかったのだという。
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