FRBは保有MBSを短期米国債にスワップする:BAML

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BAML)がFRBの金融政策正常化について気になる予想を公表している。
FRBが、量的緩和において買い入れたMBSを年限の短い米国債とスワップするというのだ。


リポートによると、スワップを開始する時期は、現在のバランスシート縮小を終了する頃になるとみられ、BAMLのアナリストらは19年終盤がその時期だと予想している。

ReutersがBAMLレポートを紹介している。
MBSとは住宅ローンを証券化したもの。
期限が国債より長いものが多い。
FRBがMBSを売却せずに保有し続けるなら、残高の減り方はかなりゆっくりとしたものになる。
これは、量的緩和をゆっくり巻き戻したいと考える人にとっては好都合と言える。
より期限が短い国債の場合、残高減少が速く進みすぎるため、一部を再投資しなければならなくなるからだ。

ところが、BAMLの予想は、そのMBSを米国債にスワップするというものだ。
しかも、その時期が今年「終盤」だという。
仮に「年限の短い」(原文は「short-dated」)の意味が1年なら、来年にも現在のMBS分が消えてなくなることになる。
仮に2-3年だとしても、2022年末にもほとんどなくなることになる。
これはずいぶん速いペースのように聞こえる。

FRBが保有するMBS(青)と米国債(赤)
FRBが保有するMBS(青)と米国債(赤)

グラフを見ればわかるように、MBSの残高は決して小さなものではない。
この残高を突然短めの国債にスワップすれば、米量的緩和の巻き戻しはかなり早いペースで進むことになる。
米市場で金融政策正常化へのブレーキを要望する声が増える中、BAMLはなぜこうした予想をしているのか。
記事には短く書かれている。

「金利リスクを抑える狙いがあるという。 」


デュレーションの長い資産を中央銀行が保有することの心配が高まっているのだ。
財政刺激策もあって米経済が回復する中、当然のことに市場金利もいくぶん上昇してきた。
デュレーションの長い資産は金利上昇によって時価が下がる。
それを会計上認識するか、含み損とするかにかかわらず、FRBのバランスシートの時価が損なわれることを市場参加者が嫌っているのだ。

この問題が厄介なのは、バランスシートを縮小すればいいというわけでもない点だ。
バーナンキ元FRB議長が言ったように、量的緩和自体には理論的裏付けはない
「量」に本質的意味があるのではなく、それが人々に与える期待に意味があったわけだ。
だから、FRBが量を縮小しても、それ自体が金融引き締めになるわけではない。
ケネス・ロゴフ教授が、誰も気づかなければ量的引き締めはイベントではないと言ったのはまさにこれを指している。

しかし、こうした理論上の話に首をひねる市場参加者は少なくないだろう。
実際に、市場に大量のMBSが放出され、逆に短めの米国債が吸収される。
その後、その米国債が比較的短期間に償還を迎える。
一方で、米政府の実質的債務は減税や社会保障負担でどんどん増えていく。
金融市場の需給は悪化し、金利上昇の要因が増えていく。
これが、本当に金融引き締め的でないと言えるのか。

日本について言えば、日銀がある検証を行っている。
それによれば、量的緩和の一環として行われた長期国債の買い入れが長期金利を低下させ、景気刺激効果を及ぼしたとされている。
さらに、この長期金利押し下げの9割以上がストックの効果だという。
仮に、日銀がバランスシートを縮小しようとすれば、ストック効果が逆転を始め、長期金利は上昇すると覚悟せざるをえない。

各国の中央銀行が難しい局面に差し掛かりつつある。
FRBが正しい危機感を持ちバランスシート縮小を急げば、自ら恐れていた長期金利上昇を引き起こし自滅を誘う。
かと言ってだらだらと資産を抱え込めば、そのリスクが嫌われ、通貨の信認が揺らぐかもしれない。
進むも地獄、退くも地獄。
ただただFRBがうまくやることを願うのみだ。
仮にFRBがここで困難を迎えれば、経済対比で何倍も大きな規模の量的緩和を行ってきた日銀は何をすることも許されなくなってしまうだろう。


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