ユーロ・パシフィック・キャピタルのピーター・シフ氏が、FRBのウソを指摘し、それが金など資産価格にもたらす影響を説明している。
もちろん貴金属の見通しはとても明るい。
しかし、不幸にも多くの価格が上昇するという見通しは良いことではない。
FRBは途方もないインフレを生み出そうとしている。
シフ氏がロシア国営RTで16日、インフレのよろしくない面にスポットライトを当てて議論を展開した。
そこそこのインフレなら、金融政策ほかの面でプラス面ももちろんある。
しかし、それは経済・社会の一部を切り取った見方に過ぎない。
たとえば、ある家計に消費者という顔と労働者という顔があったとする。
労働者という顔にとってはインフレはプラスに働くかもしれない。
しかし、消費者という顔にとってはインフレは総じてマイナスだろう。
こうした背反は債務者と債権者という面でも先鋭に起こっている。
シフ氏は、FRBが公式にアナウンスした2%物価目標のオーバーシュート目標化(いわゆる「平均物価目標」)を批判する。
彼らは、生活費の上昇ペースを過去よりも高めるのが目的だと言うんだ。
生活費の上昇が遅すぎた分を、確実に将来もっと速く上昇させることで、取り戻さなければいけないと言うんだ。
平均物価目標とは、過去2%に届かなかった分、インフレのオーバーシュートを許容しようという考えだ。
これは、インフレを善とだけ考えれば、妥当ということになるのかもしれない。
(それでも、なぜ平均をとるのか、平均をとる期間に根拠はあるのかとの批判は免れない。)
しかし、インフレを悪とだけ考えれば、全く理解ができないという話になる。
シフ氏がここまで一方的にあてこするのは、現状の極度の金融緩和が実体経済を救うことにならないと考えるからだ。
パウエルFRB議長が本当にやろうとしているのは、彼が存在しないという資産バブルを維持するための隠れ蓑を作ることだと思う。
スノーフレイクのIPOがあった今日、パウエルは記者たちにバブルは存在しないと言ったんだ。
金融資産にバブルは存在せず、人工的な低金利やQEはバブルを生んでいないと言ったんだ。
しかし、それこそまさに私たちを取り巻く状況であり、パウエルもそれを知っている。
米経済が消費のウェイトの大きな経済であることから、FRBの金融政策は消費を喚起する資産効果を重視してきた。
しかし、この戦略の欠点は、資産価格を上昇させることで効果を発揮し、下落させると逆回転する点にある。
仮に中央銀行が資産価格が高すぎると感じていても、下落に任せるのには勇気が要るし、政治的軋轢も生む。
過去10年、おそらく過去20年を見ても、FRBは不可能になるまで資産価格を支えようとした気配が感じられる。
以前からバブルはFRBが生み出してきたと主張しているシフ氏は、その構図が今後も続くと予想する。
そして、極端な金融緩和により通貨の価値が低下するという。
空気が漏れ始める度に、FRBはもう一度膨らますために何でもやる。
彼らがそうやっている限りは、金価格ははるかに上昇することになる。
これはドルの価値がはるかに下がることの反映なんだ。
シフ氏は珍しく原油価格についてもコメントした。
これまでの需給の変化を解説した後、原油価格はさらに上昇するだろうという。
何しろ、同氏にはオールマイティーなロジックがあるからだ。
「先ほどいったように、すべてのものの価格が上昇する。
ドル、みんなが買物に使うお金の価値が下がるんだから。
みんな必要なものを買うのにより多くのお金が要るようになる。」
シフ氏はとても雄弁だから、その話は9割ほど割り引いて聞いた方がよい。
9割割り引いても、同氏の話にはテーマとガッツが残っている。
スノーフレイクのIPOに関連し、キャスターがIPO市場を「バブリシャス」と表現すると、シフ氏はパウエル議長の言葉を借りて《反論》した。
心配しなくていいよ。
バブルなんてないんだから。