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FRBはインフレを微調整できない:ジェレミー・シーゲル
2020年9月23日

ウォートンの魔術師ジェレミー・シーゲル教授が、FRBの想定するインフレ推移について苦笑し、自身が予想するインフレ・ドル相場のシナリオについて語っている。


(FOMCの)ガイダンスを読んで苦笑を禁じ得なかった。
『FRBはインフレが2%に達し、その水準を緩やかに超過するようになるまで、引き締めを行わない。』
現実を見よう。
FRBにはそんな程度までインフレを微調整する能力はない。

シーゲル教授がウィズダムツリーのポッドキャストで、FRBの身の程を知らない姿勢を嗤った。

近年の主要中央銀行の思想の中には目立った特徴がある。
中央銀行が経済・市場を意のままに操れるといった前提だ。
近年ろくに2%物価目標さえ達成できない中央銀行が、あたかも自分たちがインフレを自在に操れるかのように語る。
それを前提とした政策運営を続け、現実に目標を達成できていないのに、反省した様子さえない。
むしろ、目標達成できない政策でも、世界の正統的な政策だと言わんばかりの傲慢さだ。

シーゲル教授はMITで金融政策を専攻しPhDを取得、シカゴ大学ではミルトン・フリードマンの下で働いた経験を持つ。
その教授が、2%物価目標のオーバーシュートはそう都合の良いものにはならないと話す。

「2%まで引き上げることも、ましてや超過させることもできていない。
だから、2.25%、2.50%というように超過したりはしない。」

シーゲル教授は、コロナ・ショックへの政策対応が始まった時から、来年以降3-5%のインフレが訪れると予想してきた。
その背景を改めて説明している。

政治的圧力は『失業率がまだ5、6、7%だから、まだ引き締めできない』となるだろう。
インフレ上昇を引き起こし、うまく言い訳できる特殊な要因がある。
FRBが2.25%や2.50%で引き締めを始めるというアイデアはバカげている。

かつて、許容する物価上限がオーバーシュートを許さない上限だった時、インフレが上限を超えないようにするには、上限に達する前に金融引き締めを始める必要があった。
それでも、インフレを思い通りに操るのは至難の業だった。
今回は、オーバーシュートを許す2%だから、そもそもブレーキは遅れる。
さらに《まだ経済がよくないから》という「言い訳」があるため、FRBはブレーキを遅らせやすい。
政治や大衆は概して目先のことに気をとられ、金融緩和が好きだ。
インフレ昂進の材料は揃っている。

この日もシーゲル教授には多くの質問が寄せられたが、その多くが財政悪化とインフレに関するものだったようだ。
教授は、財政悪化について端的に将来を予想している。

(債務は)インフレで払うことになる。・・・
インフレは時間とともに債務の価値を下げ、債務返済の1つの方法がインフレだ。
債券保有者にとっては素晴らしい方法ではないが、それが歴史において過大な債務比率の国家で起こったことだ。

政府債務の(広義の)返済のしかたには大きく3つある。
まずは経済成長だが、これが可能なら、そもそも債務が過大などと騒いだりしない。
次に財政再建だが、これが可能なら、やっぱり大騒ぎにはならないだろう。
この2つだけで返済できない場合に出番となるのがインフレだ。
インフレは債務負担を軽減する。
裏返せば、債券保有者など債権者はインフレにより購買力を失うことになる。

もっとも、シーゲル教授のインフレ予想の主眼は政府債務ではない。

米国の債務比率が現在過大だと言っているのではない。
私のインフレ予想は債務だけによるものではない。・・・
コロナ・ショックにより生じた莫大な債務が経済のマネーサプライを押し上げ、それが支出とインフレに拍車をかけると予想している。

理由はどうあれ、インフレ予想の構図はドル相場にもそのまま当てはまる。
シーゲル教授は、従前からの穏やかなインフレ予想とすり合う為替予想を述べている。

他の国々より米国は多くのマネーを供給しているから、米ドルは弱くなると予想している。・・・
実際、コロナ・ショック当初以来の5-10%のドル安はこの懸念を反映したものだろう。
さらに1-2年、ドル安圧力があるだろうが、パニックだとか中央銀行の特別な対応がともなうようなドル相場の崩壊にはならない。


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