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FRBはインフレにブレーキを踏まない:ジェフリー・ガンドラック
2020年1月8日

ジェフリー・ガンドラック氏による1月8日ウェブキャスト第2弾: 米景気とFRB金融政策についてコメントしている。


すべてを勘案すると、2020年に景気後退入りする確率は30-35%に留まるだろう。

ガンドラック氏がウェブキャストで年内の景気後退入り確率を予想した。
同氏は景気先行指数、PMI、消費者信頼感、新規失業保険申請者数等の指標を解説。
消費者信頼感(現況)こそ良いものの、他の指数で黄色信号が灯りつつあると指摘。
それでも、まだ赤信号となっておらず、景気は年内持つ可能性の方がが高いと結論した。

ガンドラック氏は従前どおり、厳しくFRBの金融政策を批判している。
今回のウェブキャストでも、FRBの変節を指摘した。

「興味深いことに前回の景気後退の前、賃金上昇(前年比)は4%あたりで3回ピークアウトしている。
現在はとても奇妙な時代だ。
以前はFRBは賃金(上昇)圧力を恐れて利上げをした。・・・
現在、賃金上昇はほぼ4%(3.7%)で、すぐに(4%に)到達するかもしれないのに、FRBは真逆のことをしている。」

2018年の時点ですでに失業率は相当に低く、2019年には賃金上昇率も高まってきていた。
従来なら引き締めをしていた状況で、FRBは外的要因を理由に「保険的利下げ」を行った。
ガンドラック氏は、FRBの行動パターンの変化から、FRBの意図を読み取っている。
「FRBがインフレ上昇を望んでいる」ということだ。
FRBがインフレを望んでいるのは周知の事実と考える読者も多いだろう。
しかし、ガンドラック氏は、代表的な5つのコア指数を呈示する。

  • 米CPI都市部、食品・エネルギーを除く、基調前: 2.32%
  • 米PCEコア、基調済: 1.61%
  • クリーブランド連銀メジアンCPI、基調前: 2.91%
  • アトランタ連銀コア粘着CPI: 2.77%
  • ダラス連銀、刈込平均PCE: 2.00%

「これらがコア・インフレ指標だ。・・・
2%を割っているのはたった1つだけだ。
笑える。」

同様の嫌悪感を示す人は実は少なくない。
スタンリー・ドラッケンミラー氏も同様の疑問を吐露していた。

FRBが最も注目するのはPCEコア。
これだけが2%に届いていない。
ダラス連銀の数字も2%すれすれだが、ガンドラック氏はこの指標が上向いていると言い添えている。
同氏によれば、PCEコアが低く出る理由は医療費の要素にあるという。
同指数の計算ではメディケアの払い戻し料率が用いられており、これが系統的にPCEコアを低くしているという。

私は率直に言って、意図的にこうしているのだと思っている。
FRBは最も低いインフレ率を用いたいのだろう。

つまり、FRBは賃金上昇4%でもインフレ上昇でも当分はブレーキを踏まないと、ガンドラック氏は予想する。
ならば、インフレや長期金利はどこに向かうのか。
ガンドラック氏は、インフレ上昇・金利上昇への圧力を指摘する。

「私が考えるパターンは、イールド・カーブをスティープにしておきたいために、FRBが利上げしない可能性が極めて高いということ。
金は上昇し、どこかでインフレ期待が上昇するだろう。
長期債の供給は過去数年比でかつてなく大きく、GDP比でも大きい。」

ただし、結論は少しトリッキーだ。
今や米国の債券市場も自由市場とは言えないからだ。

金利は『有機的』に上昇していくと考えている。
『有機的』という意味は『FRBの操作なしに』という意味だ。

経済のファンダメンタルズでは金利に上昇圧力が加わるが、FRBはそれを阻止しようとするだろうと予想しているのだ。
しかし、それでも、ガンドラック氏は長期側の金利上昇の可能性を捨てきっていない。
FRBのバランスシート規模とイールド・カーブの形状の間の相関を指摘している。

FRBバランスシート(青、左)と10年-3か月スプレッド(赤、右)
FRBバランスシート(青、左)と10年-3か月スプレッド(赤、右)

過去数年、この2つの指標が連動しているようにも見えなくもない。
特に、両者のボトムが一致したことから、最近多くの市場関係者が注目しているチャートだ。
短期金利がFF金利でほぼペッグされている中、量的緩和を拡大して長短スプレッド拡大とは、必ずしも直観に一致しない。
一部の市場関係者は、バランスシート拡大 → リスク・オン → 長期債売却(長期金利上昇)という伝達経路を指摘している。

ガンドラック氏は、この相関のメカニズムには触れなかった。
ただ、相関の傾向から、今後の展開を予想している。

FRBはまだバランスシートを拡大し、加速しそうだから、イールド・カーブはスティープ化しそうに思える。
・・・
投資家は債券市場の長期側を避け、将来の買い場に備えておくべきだ。


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