FRBが直面する究極の選択:ピーター・シフ

ユーロパシフィック・キャピタルのピーター・シフ氏が、次の景気後退でFRBが直面する究極の選択を予想している。


FRBは金利を1%まで引き下げ、1年半も人為的にそこに保ち、金利の正常化をゆっくりと行った。
その間、巨大なバブルが膨張したが、それに気づいた人は少なかった。
特に共和党員はそうだった。

シフ氏があるイベントでドットコム・バブル崩壊後、住宅バブルが膨張する過程を回想した。
かつて共和党から上院議員選を目指したこともあるシフ氏だが、現在は共和党とも距離を置いている。
もともと小さな政府を求めるリバタリアン的な考えの持ち主だけに、財政出動で浮かれる共和党には同調できないのだ。

シフ氏は、前回の危機の前にも同じようにバブルを主張し、FRB主犯説を主張していた。
そして、同じように顧みられることはなかったのだ。

「わたしはそれを長年主張したが、ほとんどの人は否定した。
今とまったく同じようにね。
スティーブ・ムーアが私の後に発言する番になり、経済がどんなに良好か話していた。」

右派も左派も金融緩和の生んだ好景気に浮かれていたのだ。
そして、当時の文脈は今の政権にも続いている。

「現在トランプ大統領の主席経済顧問を務めるラリー・カドローは、テレビ界におけるブッシュ大統領の主席経済チアリーダーだった。
彼ほどブッシュ・バブルを推進した人はいない。」

チアリーダーしか雇わないポピュリストの大統領。
その役を引き受ける太鼓持ちたち。
伝統的な共和党は小さな政府を目指してきたはずなのに、現実には政権を獲るたびに財政を悪化させる。

シフ氏は先月起こった米レポ金利の急騰・FF金利の誘導目標からの逸脱について、持論を展開する。

「どうして金利が急騰したのか。
その理由は財政赤字が急拡大しているからだ。
・・・
昨年、国家債務は約1.5兆ドル増えた。
こんなことはオバマ政権下のグレート・リセッションの最悪期でもなかったことだ。」


レポ金利急騰の原因は、貨幣需要が漸増していたところに法人税支払い・米国債入札が重なったというのが定説だ。
しかし、シフ氏は米国債入札に注目し、米国の債務増大が効いていると主張する。
米財政の危うさは、債務急増だけでないと解説する。

「政府は償還を迎える債務についてもリファイナンスしなければならない。
国家債務がとても短いデュレーションで調達されているからだ。
・・・
ロール・オーバーしなければいけない債務が莫大にある。
十分な買い手がおらず、貯蓄がない。
だから、市場は金利を上昇させたのだ。」

シフ氏の解釈はややバランスを欠いていると言わざるをえない。
しかし、一方で、短期金利急騰を一過性の話とするのも楽観的すぎるだろう。
(実際、FRBがTビル買い入れを始めたのはそれがわかっているからだ。)
貨幣需要の増大を認めるとしても、米財政が悪化する中で起こったクラウディング・アウトの可能性を端から除外するわけにはいかない。
貨幣需要は増えたが、グレート・リセッション前と比べればFRBのバランスシートはけた違いに大きい。

シフ氏は、景気後退が鮮明になり、それがトランプ大統領の責任にされると予想する。
2021年には社会主義の政権が生まれるとし、そこで人々の認識が決定的になるという。

誰も、FRBによって状況が制御可能で、FRBが政策を元通りにできるとは信じない。
そして、ドルがクラッシュする。
ドルがクラッシュすれば債券も一緒だ。
スタグフレーションになり、金利上昇の中で深い景気後退を迎える。

シフ氏はその時FRBが究極の選択を迫られるという。

  • ドル防衛: 利上げを行うが、それがバブルを内爆させる。
    政府は社会保障負担・国債をデフォルトする。
  • ドル防衛を断念: 「ハイパーインフレ」になる。

果たして、次の景気後退でこれが起こるか、ハイパーインフレほど大きなものになるかは別として、定性的にはこうしたことは基軸通貨の交代の際に見られた現象だ。
シフ氏は、いつになくこれに備えるべきと主張する。
前回の危機のように、FRBがバブルを膨らますことで救済してくれるとは想定すべきでないという。

自分で自分を助けるしかない。
FRBは助けてくれない。


 - 海外経済, 投資 , , ,