ゴールドマン・サックスのヤン・ハチウス氏は、今後数年の米経済のシナリオを説明し、経済状況によってはFF金利が4%を超える可能性もあると話した。
「(過熱した労働市場が)持続可能でない賃金上昇を生み出すなら・・・インフレが上昇し、労働者の実質賃金が低下するだろうから、誰の利益にもならない。
現在、賃金は5-6%のペースで上昇しており、速すぎる。」
ハチウス氏がBloombergで、米経済、特に労働市場の過熱が継続していると話した。
同氏は、米経済の鈍化を予想するものの、失業率については3.25%まで低下すると予想している。
ハチウス氏といえば、昨年あたりはインフレを一過性とするFRBを支持する側に立っていた。
確かにインフレには一過性の要素もあった。
同氏はそれが今後剥落していくと予想している。
それでもインフレが当面FRBの目標よりはるかに高くあり続けるとの見方が優勢だ。
ハチウス氏も今ではそちらの側に加わっている。
ハチウス氏は、経済鈍化を予想する重要な理由として「FRBが鈍化させようとしているから」と話した。
米インフレは経済を鈍化させても解決しなければいけない問題になっている。
金融引き締めについての同氏の見方にはあいまいさがない。
もしも経済が鈍化せず、特に雇用増において大きな鈍化が見られないなら、(FF金利は)はるかに高く4%超のレンジまで行く可能性もある。
私たちのメインシナリオは市場の織り込みと同様で3%超だが、過熱し続ければはるかに高くなりうる。
3%超という数字を吟味するために、他の投資家たちの意見を思い出そう。
米経済が「壊れる」FF金利を彼らはどう言ってきただろうか。
- ジェフリー・ガンドラック氏: 1.0-1.5%(昨年12月の発言)
- スコット・マイナード氏: 2%前後(3月)
- ビル・グロス氏: 2.5-3.0%(3月)
- レイ・ダリオ氏: インフレを退治できる水準(4月)
3%超はすでに危うい水準にしか見えない。
ソフトランディングはないのだろうか。
ハチウス氏は想定シナリオを3つ挙げた。
- メインシナリオ: FF金利が2023年半ばに3%超でピーク。
- ダウンサイド: より急激な金融引き締め。
- アップサイド: 経済が強まる、または、金融引き締めをやり損ねる。
ハチウス氏は、イールドカーブや先物など市場が暗示しているシナリオについても解説している。
市場が告げているのは、新たな利下げがなされるリスクが有意にあるということだ。
市場は景気後退のリスクが有意にあると言っている。
つまり、ソフトランディングはやはり隘路ということだろう。
ハチウス氏は、米国株市場の見通しも尋ねられている。
答は決して明るいものではないが、視野を広げて考えるべきというものだった。
必ず株価が下落するとは限らない。
しかし、なんらか、株価が弱くなる、金利が上昇する、通貨が強くなる、クレジット・スプレッドが拡大する、の組み合わせが起こるだろう。
これらは互いに代替し合いうる。