50年来の友人、ロバート・シラー教授とジェレミー・シーゲル教授がウォートン校のラジオ番組で楽しい会話を披露した。
(シラー教授)
FANGにかかわるナラティブはとても強固なものなんだ。
大学を中退した起業家が事業を始めた。
それが、大学に入ったことのない人たちを魅了する。
シラー教授がウォートン・ビジネス・ラジオに招かれ、シーゲル教授と会話した。
シーゲル教授が、現在の市場のナラティブを尋ねたのに対するシラー教授の答だ。
市場関係者が用いることのないアングルからの答が面白い。
シラー教授は、市場で人気を集めてきたFANGを政治・社会の風潮と関連付けて考えている。
(シラー教授)
これがトランプのメッセージの1つなんだ。
『アメリカを再び偉大にす』れば、炭鉱夫もある程度偉大になるはず、と。
社会で輝きを失った人々に再起のチャンスが存在する。
そんな夢がトランプ氏を大統領にし、FANGの人気にも一役買っているとの解釈だ。
ところが、トランプ大統領の名前が出たところで、話は大きく脱線する。
シーゲル教授は根っからの共和党支持者。
ただし、保護主義などには反対してきた。
シラー教授は日頃からリベラルな発言が多く、おそらく民主党寄りのスタンスだろう。
(シーゲル教授)
彼はうちの大学を卒業したんだ。
私が着任するかなり前だ。
私はこう言われ続けたよ。
『おお、あなたはトランプの先生なんですね。』
私は言い返してきた。
『私たちは同じ歳だから、それは難しいだろうね。』
もちろん、ボケの後にはツッコミが入る。
(シラー教授)
よくあることじゃないか。
若い教授がほぼ同年齢の学生を教えることは。
シーゲル教授は、大統領がウォートン校の出身であることをあまり誇りに思っていないようだ。
話す機会を待っていたのかもしれない。
ひとしきり言い終えると、ようやく本題に戻った。
ビル・ゲイツ、ウォーレン・バフェット、スティーブ・ジョブスなど、大学を中退した起業家が偉大な企業を生み出してきた。
(シラー教授)
革新的な企業の指導者たちは少しクレージーに見える。
でも、背景には天才の存在があるんだ。・・・
これこそフランク・ナイトが1920年代に強調した資本主義制度の天才なんだ。
シラー教授は、テスラの創業者でCEO、イーロン・マスク氏について、天才なのか、ただの大口叩きなのか、まだ誰にもわからないと語る。
その一方で、テスラの将来について明るいとはいえない予想を語っている。
(シラー教授)
テスラは最終的にはポラロイドのようになると思う。
エドウィン・ランドは大学を中退し、ポラロイドを作った。
彼が率いている間は繁栄したが、引退したら没落した。
今度はシーゲル教授がカブセてきた。
(シーゲル教授)
ちなみに、私は『株式投資』初版で最も割高な1970年代のニフティフィフティ銘柄をポラロイドとしている。
PER 90倍だった。
その後、消滅した。
気の置けない者どうしの放談と言った感じで、結論のはっきりしない話に終始している。
結論が見えないのは、いずれも難問だからでもあろう。
言葉の端々に、様々なアイデアの芽があるように感じられ、興味深いトークになっている。