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アスワス・ダモダラン ESG経営・ESG投資の不毛・欺瞞:アスワス・ダモダラン
2020年9月23日

アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、今おお流行りのESGについて本音を語り、その議論のしかたに注文を付けている。


多くの世界でESGは、社会にとって良いだけでなく、企業や投資家にとっても良いものとされている。
私の意見では、ESGにかかわる誇大広告は、それが何か、何をもたらしうるかの両方で現実を飛び越しており、そのバズワードは役立たない。・・・
ESGによってコンサルタント・バンカー・投資運用者が金儲けできる可能性が、少なくとも彼らをこの概念の応援団にし、曖昧で決定的でなく、明らかに矛盾するかもしれない研究に基づいて成果を主張させていると私は信じている。

ダモダラン教授が自身のブログで、またもや言いにくい正論を言い切ってくれた。
(ちなみに教授が「バズワード」と言ったのはサスティナビリティやレジリエンスなどの聞こえのよいキーワードのことだ。)
証券・投資業界は今ESGブームだが、これが本当に企業収益・企業価値を向上させるかについての証拠は極めてあいまいだ。
教授はこの曖昧さを2点挙げている。

  • ESGと営業成績(成長と収益性)の間の関係は弱い。
    「社会的責任を果たすことが高い成長・利益・価値をもたらすと企業に話すことは偽りの宣伝だ。・・・
    ESG提唱者が企業に善くあれと言うより、企業に悪くあるなと言う根拠の方が強い。
    要するに、上場企業が自社を『善く』見せるためのお金のかかるジェスチャーは、業績改善・リターンの両面で不毛だ。」
  • ESG投資と超過リターンの関係は弱い。
    仮に相関がある場合でも、どちらが原因でどちらが結果かは明らかでない。

一方で、ダモダラン教授は、ESG投資にいち早く参入しようとすることは、投資にプラスに働くとも書いている。

「市場に先んじてどのように企業の行動が、善いにせよ悪いにせよ、パフォーマンス・価格に影響を及ぼすかを評価する投資家は、超過リターンを得ることができるだろう。
もしも、投資家がアクティビストとして(企業の)変化に影響を及ぼすことができるなら、さらに多くの恩恵を得られる。」

確かにこういう現象はあるのかもしれない。
しかし、この話は少しESGとは離れた話になっているようにも読める。

実際、ダモダラン教授のESGに対するスタンスはかなり否定的だ。
コミュニティの多くの人々が感じている引っ掛かりを教授は勇気をもって公言してくれている。

ESG文献の多くが、企業は社会政策策定者の役割を演じるより、利益を上げ株主に価値を還元することに注力すべきとのミルトン・フリードマンの説をほぼおざなりに否定することから始まる。
なぜ企業がその使命を拡大しなければならないのか、その命題を推す証拠は何か、ESG提唱者の議論を検証すればするほど、私はフリードマンの方に傾いていく。

ダモダラン教授は、奇妙なパラドックスを説いている。
仮にESGが正しいなら、ESGによって企業収益・企業価値は上がるから、現実的にはフリードマンと同じことを求めることになる。
仮にESGが正しくないなら、ESG推進者は、失われた企業収益・企業価値に見合う価値が社会に与えられたことを証明しなければならない。
このパラドックスを読む限り、企業経営者・投資家はとりあえずフリードマンについている方が安全のようにも思えてくる。

ダモダラン教授がESGに対して否定的なのは、ESGという美名の陰で金儲けをする輩が多い点にもあるようだ。
バラ色の未来を語り金儲けに勤しむ輩の存在が、企業や投資家の無駄遣いにつながる可能性を指摘し、現実を理解した上で善いことを行うべきと言いたいのだろう。

少数の人たち(コンサルタント、ESG専門家、ESG評価者)は恩恵を得るが、企業は、ESGがビジネス用語になる前より社会的責任を果たすようにはならないだろう。
必要なのは、ESG関連の企業方針に関する開かれた、率直な、詳細の対話だ。
善くあることは一部の企業には価値を与えるが、他の企業では価値を破壊するかもしれないことを認めることだ。
長期的には、善い企業に投資することは過渡的時期に報われるかもしれないが、長期的にはしばしばリターン向上よりリターン悪化につながることを認めることだ。


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