Eマネーがマイナス金利政策の深掘りを可能に:IMF

2つの通貨と換算レート

頭がこんがらがってしまった。


IMFの用意した設例で説明しよう。
政策金利が-3%の状況で、100ドル=100 EドルをEドルとドル現金で1年保有した場合だ。

  • Eドル: 預金に課されたマイナス金利により1年後に97 Eドルになる。
  • ドル: 100ドルは100ドルのままだが、この価値は換算レートが1から0.97に引き下げられることで《1ドル=97 Eドル》になる。

現金とEマネーが乖離していくにしたがい、すべての商店は土産物屋のように両方の建値で商売を行うようになるという。
確かにこれならタンス預金による回避は封じ込めうる。
ゼロ金利制約からの脱出だ。

とは言え、IMFスタッフもこうした案をもろ手を挙げて推しているわけではない。
法律の整備のほか、国民に理解を得るために大きな努力が必要になると予想している。

マイナス金利アレルギー

人々の貨幣錯覚は根強い。
利下げが一たびゼロを超えてマイナスに入ると、みんな突然問題視し出す。
預金がマイナスになるようなら実質的な預金への課税であると批判し出す。
しかし、これは不合理な言い分だ。
実質的な課税はとうの昔から始まっている。
日本の預金金利からインフレを差し引いた実質金利は相当昔からマイナスのままだ。

逆に言えば、現預金保有を不利にすることで投融資を促すのが金融緩和の本来のメカニズムだ。
金融緩和とはもとより預金者を締め上げる性質のものなのだ。
それをマイナスをまたいだ時だけ問題視するのは少々視野が狭く聞こえる。
唯一ゼロをまたぐことで問題視すべきは、それにより預金金利もマイナスにできるかという技術的なものにすぎない。
IMFの今回の提案は、一応それに道を示すものではあったろう。


世間でなされているマイナス金利への批判の多くは、実はマイナス金利に対して向けられたものではない。
むしろ、極めて低い金利を今後も継続すべきかの議論である。
とりわけ、超低金利の副作用の問題は日銀も含めて多くの人が共有している。
この観点になると、マイナス金利の推進者たち(存在するかどうかあやしいが)もあまり説得力の議論をしていないように感じられる。

根強い貨幣錯覚

貨幣錯覚について言及したが、人間とはこうも不合理なものだ。
仮に、3%のデフレの世界でタンス預金をしている人がいたとする。
-3%のマイナス金利をしているのがいやで、タンス預金にしているのだ。
この場合、毎年タンス預金の価値(購買力)は3%上がるのだから、毎年3%ずつ元本を取り崩してもタンス預金の価値は変わらないことになる。
しかし、人々は往々にして元本を取り崩すのを嫌う。

逆に3%のインフレの世界で利率3%の銀行預金をしている人がいたとする。
この場合、毎年金利分の3%を使ってしまうと、インフレによって銀行預金の価値は毎年3%ずつ減価してしまう。
それなのに、往々にして人間は後者の方を心地よく思うものなのだ。
実質金利で言うと、前者のタンス預金は《0%-(-3%)=+3%》、後者の銀行預金は《3%-3%=0%》である。

各国の中央銀行は一生懸命、前者から脱して後者にしようとしてきた。
FRBに限っては、後者を踏み越え実質金利でもプラスになるところまでたどりついたところだ。
金融政策の本質は、預金者を絞り上げて投融資をさせること。
しかし、その意味を人々に理解させるのは容易なことではない。


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