Eマネーがマイナス金利政策の深掘りを可能に:IMF

IMFがスタッフの研究として、マイナス金利政策の限界を回避する手法を公表した。
手法としての説得力を備えるが、果たして次の景気後退に間に合うだろうか。


「世界経済は回復してきたが、将来下降期を迎えるのは避けられない。
厳しい景気後退期には過去3-6%の利上げが必要とされてきた。
もしも次の危機が起これば、そうした金融政策による対応余地を備えた国はほとんどない。」

IMFのRuchir Agarwal氏とSigne Krogstrup氏が景気後退時の金融政策について危機感を述べた。
非伝統的金融政策にも支えられ、各国で長く景気拡大が続いている。
景気は回復したが、依然として金融政策はアクセルから足が離れない。
次の景気後退期にどれだけ踏み込む余地を残しているか、多くの人が心配している。

ローレンス・サマーズ元米財務長官のようなハト派は、景気後退が来ればやれることがないから、景気後退が来ないように金融緩和を継続しろと主張する。
確かに一理あるものの、この路線を採ったからといって永遠に景気後退を回避できるものでもない。
さらに金融緩和を続ければ、景気後退がやってきてしまった時、状況はむしろ悪化しているのではないかとの疑問もわく。

一方、元IMFチーフ・エコノミスト ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授は、金融緩和、とりわけマイナス金利政策について深掘りを可能とする環境づくりを促している。
マイナス金利に否定的なサマーズ氏とは対照的なスタンスだ。)
何かと評判の悪いマイナス金利だが、フロアを外すことで効果が大きく変わって来ることに期待したものだろう。


現金の呪縛

IMFスタッフは、このフロアについて説明している。

「現金が存在すると、マイナス圏に大きく利下げするのが不可能になる。
現金は名目金利がゼロのところで銀行預金と同じ購買力を有する。
さらに、現金は銀行通貨との引き換えで無制限に引き出せる。
・・・
キャッシュはゼロ金利を得る無料のオプションであり、金利フロアとして働く。」

つまり、マイナス金利を深掘りしたくても、預金者はタンス預金で対抗するので、マイナス金利政策には現状限度があるのだ。
とても現状から3-6%も引き下げられるものではない。
(岩田一政 元日銀副総裁はマイナス金利の限界を保管コストとの比較から-2%程度と見ている。)
このフロアを取り払う1つの乱暴なやり方は、現金、特に高額紙幣を廃止することだ。
しかし、現金には現金の役割があり、それを失う代償は小さくない。
この提案が政治的に受け入れられる可能性は(近い将来では)大きくないだろう。

Eマネーの導入

そのため、IMFスタッフは、混乱を小さく抑えるような代案を提示している。
それは、マネタリー・ベースを2つの通貨に分けるというものだ:

  • 現金: Eマネーとの間に換算レートを設定する。
  • Eマネー: 中央銀行が発行する電子通貨で、政策金利が支払われる(マイナス金利なら召し上げられる)。

この提案の最大のポイントは、現金/Eマネーの換算レートである。

「Eマネーにマイナス金利を設定する場合、中央銀行は、Eマネーにかかるマイナス金利と同じ利率で現金が減価するよう現金/Eマネーの換算レートを設定する。
現金の価値は、Eマネー建てで低下していく。」

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