日本銀行

 

Bloombergの優しいストレス・テスト

Bloombergが株価下落時に日銀の財務に生じる影響について試算している。
リーマンショック再来なら日銀損失6.2兆円も」というタイトルなのだが、どうやら意図的に本丸を外した議論になっている。


リーマンショック・シナリオでは、日銀の損失は6.2兆円に達する見込み。
これは9月末時点の自己資本8兆円に近い額だ。

Bloombergは淡々と試算の結果を書いているのだが、正直言って小さな話に聞こえてしまう。
《なんだ、2兆円ぐらいのショートならなんとでもなるだろう》といった印象を持ちかねないし、そもそも《100年に1度の危機》と言われたリーマン危機の再来なら日銀の増資もしかたあるまいと考えてしまう。
この違和感はどこから来るのか。
続きを読めばわかる。

「資産別では国債の損失が1.9兆円、ETFが4.2兆円、REITが0.1兆円となる。」

この試算自体が株式に焦点を当てている点に違和感を感じてしまうのだ。
リーマン危機とは物価を軸として考えればデフレ的な危機であった。
資産価格が急落したのもデフレ的だし、その後実際に経済はデフレ側に触れ、金利は低下した。
Bloombergも冒頭で「日本銀行にとって金利上昇は最大のリスク」と指摘するように、日銀のバランスシートにおける最大のリスクは保有する国債であり、インフレや金利の上昇であろう。
Bloombergはそれを承知の上で、今回は株価下落のリスクをクローズアップしたのである。
なぜか。
それは、日銀が続ける6兆円のETF買入れに対する疑問をサポートするためだろう。


問題視されるETF買入れ

日銀は現在、年間80兆円を目途に国債を買い入れるとしているが、実際には60兆円を割るところまでペースが落ちている。
実に効率のいいイールド・カーブ・コントロールが実現しているわけで、買入れ金額を節約できることは喜ばしいことだ。
つまり、20兆円以上買入れ額に余裕があるのだ。
なぜ、実質的に株式投資となる年間6兆円ばかりのETF買入れを続けなければならないのか。
日銀はリスク・プレミアムの圧縮と説明するが、どれだけの人が真に受けるだろう。
ほとんどの人が、政治的な思惑を背後に感じているはずだ。

日銀がETFを買い入れてしまうと、後が厄介だ。
ETFには償還がなく、市場で売ればたちまち株価下落要因となる。
信託に組んで投資家を募ったり、自社株買い等を待つことになろうが、時間がかかるし、結局は需給をネットで悪化させる。

ETF買入れはなるべく早く手仕舞うべきとの声は多い。
だから今回Bloombergはそちらを中心に据えて結果を示したのだ。

(次ページ: 本当のリスクはインフレ側に)


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