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アスワス・ダモダラン 90年代が株価評価を変えた:アスワス・ダモダラン

アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、21世紀の株価評価のあり方について語り、自身の保有株についてコメントしている。


古くからの指標、PER・PBR、EV/EBITDAなどはすべてかなり出来上がった会社について考えられたものだ。
こうした指標をまだ事業モデル構築中の若い企業に用いたら・・・まったく役に立たない。

ダモダラン教授がBarron’sで、単純な株価倍率・企業価値倍率の限界を指摘した。
こうした限界が特にクローズアップされたのが、1990年代だという。
教授はこの時期「公開市場がかつて未公開市場だった領域に侵入した」と表現している。
つまり、ドットコム企業など、利益・売上・事業モデルが整わない企業に上場の道が開かれたのだ。

「これが起こった時、みんな奇妙な反応をした。
『彼らはばかげている、不合理だ、浅薄だ。』と言った。
昔のバリュー投資家はこれで大いに困ったのだろう。」

日頃から古いタイプのバリュー投資家をディスってきたダモダラン教授は反論する。
市場が一方的におかしいわけではなく、旧来のやり方が新たな状況に適さないだけだ。
基本となる「キャッシュフロー、成長、リスク」は過去でなく将来を推定しなければならない。
それなのに怠惰な投資家は実績の倍率、良くて今期予想の倍率で高い・安いを判断しようとしたがる。

ダモダラン教授は、旧来のやり方が通用しなくなった理由を解説する。

「ファイナンスの最大の問題の1つは、それが主に20世紀後半の米国で発展した点だ。
20世紀後半の米経済は、歴史上最も安定した中央回帰の経済だ。
伝統的な昔のバリュー株といえば、低PER株。
これがうまくいったのは、低PER株が中央回帰し儲かったためだ。」

ダモダラン教授は、静的でなく動的に、過去でなく将来を議論しろ、と諭す。

実績や今期予想の利益を将来の利益とみなすべきではない。
その企業が今後どう変化していくか、それにともなってどのような財務成績を上げていくか、が重要なのだ。
このあたりは一般の投資家にも良いメッセージなのではないか。
倍率やDCFを求めるスプレッドシートを入手・作成しただけで、自分が株価を評価できると勘違いする人は驚くほど多い。
実際には、株価評価とは、そうしたテンプレートに入れる変数をどう想定するかなのだ。
想定の巧拙こそ、ファンダメンタリストとしての能力だ。

ダモダラン教授は、大学で教えるだけでなく、自分も投資家として株式投資を行っている。
インタビューでは、自身の銘柄選びについても語っている。

市場株価が間違っている(割高)なら、どんなに素晴らしい会社でも興味がない。
素晴らしい投資にはならない。

目下、フェイスブックやアップルを保有しており、過去アマゾンを保有していたという。
グーグルは買ったことがないが、間違いだったと明かしている。

  • フェイス・ブック: ニュースやエンターテインメントをSNSで見る流れにうまく乗っている。
  • アップル: すでに成熟企業だが、史上最も素晴らしいキャッシュ・カウ
  • テスラ: 昨年半ばにフェアバリュー180ドルと見て買い、年初に売った。
    「奇妙なことに、この危機はテスラを自動車産業ではるかに強力な企業にしたと考えている。
    競合に比べ資本を必要としないためだ。
    イーロン・マスクCEOが自動車製造をテントで行った事実は、有利に働いている。」

テスラを妙にほめているが、現在の株価は900ドル。
1年で価値が5倍になったとダモダラン教授が考えているとは思えない。
それは、コロナ・ショックで買い戻さなかったことにも表れている。
(コロナ・ショックでの同株の底は360ドル程度。)

ダモダラン教授は、動的に将来を、と説いた。
これはマクロにも当てはまる。

今年は最悪の年になりつつあり、それはみんな同意している。・・・
本当にすべき議論とは、次の3、4、5年で何が起こるかだ。
この損害のどれだけが恒久的か、どれだけが一過性か?
これが健全な議論だ。


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