ウォートンの魔術師ジェレミー・シーゲル教授が、足元の強いCPIの数字に確信を強めている。
FRBは市場予想より早くテーパリングを発表すると予想している。
私はこの1か月インフレがFRBの予想よりはるかに高まると言ってきた。
データについていえば、これまで見てきたのは氷山の一角にすぎないと考えている。
シーゲル教授がCNBCで、従前からのインフレ予想を据え置いている。
実際、これまでのところ、米インフレはシーゲル教授のイメージに近い上げ方をしている。
13日発表の6月のCPIは再び市場予想や前月を上回っている。
- 総合: 前年同月比+5.4%、前月比+0.9%
- コア: それぞれ+4.5%、+0.9%
FRBは(テーパリング等に向け)動かざるをえない。・・・
テーパリングの発表はおそらく7月のFOMC、間違いなくジャクソンホールまでに行われるはずだ。
シーゲル教授のテーパリング予想は、従前と変わらず、コンセンサスより早めを示している。
1つの要因は、物価指数に算入される住居費だ。
住宅市場が高騰を続けるのに、物価指数に参入される家賃はそこまで上昇していない。
これが年後半、物価指数を押し上げるだろうという。
インフレ上昇予想と足元の長期金利低下の間の矛盾について尋ねられると、シーゲル教授は、長期金利に影響する要因はインフレだけではないと返した。
デルタ変異種、ヘッジ需要など、米長期債が求められる要因は他にもあるという。
今年の年末の長期金利について、教授は2.0%を予想した。
シーゲル教授は、かなり高めのインフレを予想し、金利上昇も予想している。
では、株式へのスタンスはどうなのか。
経済には大量のお金が供給されており、まだ株式に流れ込んでいる。
強気相場はまったく終わっていない。・・・
トレマーはあろうが、お金は入ってきている。
いつも言うように、株式は実物資産であり、お金は実物資産にまだ流入している。
シーゲル教授は以前から、パンデミック前に比べて20%程度の物価水準のシフトが数年かけて起こると予想してきた。
つまり、ドルの価値が20%程度減価してしまうという予想だ。
仮に予想が正しいなら、現金、国債、地方債に置いておけば、確実に投資価値が減ってしまう。
減価するのを防ぐために物価連動債を買っても、利回りは「マイナス1%」だ。
インフレでやられなくても、実質利回りでやられてしまう。
だから、債券でなく何か他の投資対象を物色せざるをえず、株式に向かう。
シーゲル教授は、市場コンセンサスより早い金融政策正常化を予想している。
それが実現するなら、市場はトレマー(揺れ)を起こすかもしれない。
それでも、現状では株式に戻ってこざるを得ない要因がある。
シーゲル教授は、インカム・ゲインを求める投資家に対し、引き続き配当株を奨めている。
「インフレがさらに継続する中でインフレから唯一保護される利回りは配当株だ。
そうした市場に投資しておけば、後で魅力的になるだろう。・・・
インカムが欲しければ、みんなが行き着くのは配当株になるだろう。」
シーゲル教授は(極端な高インフレでないかぎり)株式配当がインフレ分も含め成長していくと考えている。
そこが、インカムがフィックスされているフィクストインカムとは異なるところだ。
この比較により、配当株がフィクストインカム投資の一部に対しても受け皿となりうると見ているのだ。
シーゲル教授は、一部コモディティ価格が大きく下げておりインフレを示していないと指摘されると、その見方は適切でないと返している。
パンデミック前との比較では、まだ大きく上昇しているためだ。
直近の短期間だけを見て、インフレ動向を判断すべきでないと戒めた形だ。
足元の市場ではリフレ・トレードは終わったかのように見えている。
しかし、教授の目には、リフレ・トレードはまだまだ続くと見えているのだろう。
実物資産を保有すべきだし、株式を保有すべきだ。
私は株を売っていない。