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2030年ならまだ米ドルが王様:ケネス・ロゴフ
2020年11月13日

ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授が、ドル相場の不気味な安定の原因を分析し、ドル凋落の可能性についてコメントしている。


これまでのところ、パンデミックに対する米国の一貫しない対策、経済をカタストロフィから救うための大規模な赤字財政による支出、ジェローム・パウエルFRB議長が『多くの越えてはならない線を越えた』と述べた金融緩和にもかかわらず、主要なドル為替レートは不気味に落ち着いている。・・・
通常、為替レートのボラティリティが米景気後退期に大きく上昇することを考えると、この安定は驚くべきことだ。

ロゴフ教授がProject Syndicateで、不気味に安定する為替相場について関心を示している。
不思議なのはボラティティが極めて低いこと。
さらに、ドル安を予想させる材料が多くあるのに、それがまだ本格的には起こっていないことだ。
教授は、為替相場の変動要因については明らかになっていないと書いている。
その中で、最もありそうな理由として各国の「金融政策の麻痺」を挙げている。

すべての主要な中央銀行の政策金利はゼロまたは実質的下限(ゼロ近傍)にあり、主な予想者は、たとえ楽観的な成長シナリオであったとしても、何年も続くと信じている。
もしもゼロ近傍に下限がなければ、各国中央銀行は今頃金利をゼロよりはるか下、たとえばマイナス3-4%に設定していただろう。
これが示唆するのは、たとえ経済が改善しても、政策決定者がゼロ金利を『解除』し金利をプラス領域に引き上げるまでに長い時間があるということだ。

話は横道に逸れるが、この部分には2つ考えさせられるところがある。
1つはもちろん資産価格への影響だ。
長くゼロ金利が保たれるなら、実質ベースでは長くマイナスに保たれると予想される。
資産価格は「長い時間」押し上げ圧力を受け続けるのだろう。

もう1つは、金利に下限がなければ必要とされる政策金利としてマイナス3-4%と書かれているところ。
ロゴフ教授はこれまで通貨のデジタル化を提唱してきた。
その1つの理由が、中央銀行に新たな武器を与えるというものだった。
現金に政策金利を導入することであり、デジタル化された通貨では現金にマイナス金利を課すことができる。
もしも、それが実現していたら、現金にマイナス3-4%の金利が課されていたと思うと、すばらしい反面、なんとも恐ろしい話だ。
(ちなみにこの場合、例えば米10年債利回りをゼロにしても、イールドカーブはかなり立ち上がった形状になる。
現状の金融緩和の欠点の一部を回避できるかもしれない。
と同時に、別の欠点(預金税)が頭をもたげることになる。)

話を本筋に戻そう。
ロゴフ教授は、為替相場の不気味な安定には様々な理由があるだろうと述べた上で、金利が「極低温に凍結」されたことで「単一の最大の不確実性の源泉」がなくなったと解説している。
そして、それは永遠には続かないと予想している。

インフレ格差を制御するために、ブロード・ベースの実質ドル指数はほぼ10年間上昇を続けてきた。
ある時点で(2000年代初めに起こったように)おそらく平均回帰するだろう。

ドルの実質実効為替レート(ブロード)
ドルの実質実効為替レート(ブロード)

前回、ドルの実質実効為替レートが明確に頭を打ったのはプラザ合意の1985年とドットコム・バブル崩壊後の2002年だ。

ロゴフ教授は、米国の持つある脆弱性について心配し、警戒を怠らないよう促している。

簡単にいえば、世界市場において上昇を続ける米債務の割合と世界経済において低下を続ける米産出の割合の間に長期的な根本的乖離が存在する。・・・
似たような問題は結局、戦後のブレトンウッズ体制での固定為替レート崩壊につながった。・・・
2030年にはまだ米ドルがキングであり続ける可能性が圧倒的に高い。
しかし、いま私たちが経験しているような経済的トラウマがしばしば痛みをともなう転換点になることを覚えておく価値がある。


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