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2021年最大のリスク:ヌリエル・ルービニ
2021年4月9日

ヌリエル・ルービニ ニューヨーク大学教授が、2021年の最大のリスクを2つ挙げ、それぞれについて不吉なシナリオを述べている。


短期的には財・労働市場・コモディティにたるみが見られるが、今後2-3年を見ると、日米欧の先進国経済全体でまだ財政赤字の大規模なマネタイゼーションが行われる。
多くの負の供給ショックが見られるようになるのではないか。
それがインフレにつながり、そしてスタグフレーションになるかもしれない。

ルービニ教授がBloombergで、中期的にインフレが進行する可能性を指摘した。
教授は以前から短期のデフレ、中期のインフレを予想してきた。

ルービニ教授は現在、潜在成長率を減じコストプッシュにつながる要因が多く存在すると主張する:

  • 脱グローバル化、保護主義
  • 米中緊張の激化
  • 先進国・新興国市場での高齢化
  • 不十分な格差縮小策・労働者支援
  • 資本への課税強化

こうしたインフレ要因が政府財政の悪化と相まって、人々の期待を変化させる可能性があるという。

財政赤字のマネタイゼーションの中でこれがついにインフレ期待のアンカーを外し、各国中銀の目標を超えるインフレを引き起こすかもしれない。
FRBは、インフレ(平均)が目標を超えれば引き締めると言っているが、現在莫大な民間・公的債務が存在する。
過剰な民間・公的債務がある中で中央銀行が利上げすれば、金融クラッシュを引き起こすリスクがある。

この10年(日本の場合30年)岩のように動かなかったインフレ期待が動くかもしれないとの、とても大きな予想だ。
仮にこうした大きな変化が起こったとしても、日米等の中央銀行がやれることは多くない。
金融を引き締めれば、国家予算が組めなくなってしまうかもしれない。
逆に、インフレを放置すれば、国民は悲鳴を上げるだろうが、債務者たる国家は潤うことになる。

「私は中央銀行が独立性を失ったのではないかと心配している。
中央銀行は利上げして金融危機や景気後退を起こすか、金融緩和を継続し目標以上のインフレを引き起こすか選択を迫られている。
おそらく、後者の方が前者よりありそうだ。」

ルービニ教授は米ドルについてもコメントしている。
ここでの見方も、インフレについての見方とすり合っている。
短期的にはデフレ的であり、米経済の回復ぶりが欧州などより順調であることからドル高だ。
しかし、徐々にドル安要因が勝ってくる。

中期的には、米国は大きな経常収支・財政の双子の赤字を抱えている。
米財政の債務が大きくなるにしたがい、双子の赤字も大きくなる。・・・
FRBは見通せる将来についてゼロ金利とQEを行うと言っているから、ドルの歯止めとなる資本流入も起こらない。」

ルービニ教授は、徐々にドル安傾向に回帰すると予想する。
その理由として、もう1つ地政学的見地を付け加えている。

最後には、米国が米ドルを安全保障と戦略のためのツールとして用い、戦略上のライバルに対する制裁に使うところから、弱点が生まれる。
この戦略上のライバルが中国、ロシア、イラン、北朝鮮だろうと、彼らはドル資産やドルの調達システムから別に移ろうとする。
これらすべての要因を勘案すれば、ドルは時間をかけて徐々に弱くなっていくだろう。

終末博士と呼ばれることもあるルービニ教授。
頭脳の明晰さは明らかであり、しかもしゃべりが超高速だ。
いっそう聴く者の気持ちを暗くする。
しかも、怖いところで予想を当てる。
経済・市場のタイミングはさすがに的中とはいかないが、地政学的・政治的イベントの予想を当てることがある。
米国によるイラン攻撃トランプ支持者による暴動などをかなり早いうちに予想するなど、大いに世間を驚かせてきた。

そんなこともあり、キャスターはルービニ教授に2021年の最大のリスクを尋ねている。
教授が答えたのは2点: インフレ回帰と米中対立だ。
特に、後者について経済・市場を「完全に混乱させうる」と警告している。

台湾での状況が軍事対立に発展する可能性をみんな過小評価している。
これはリスク、テイルリスクだが、軽く見られている。
米中は衝突進路に乗っており、冷戦がどんどん冷えてきている。
私は、時間とともに熱い戦争のリスクもあると考えている。


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