アリアンツ首席経済アドバイザー モハメド・エラリアン氏が、現在の市場が想定しているシナリオを解説し、2021年のリスクとそれを乗り切るために必要となる手法を列挙している。
より大きなお財布を持つ中央銀行が投資家の保有する証券を買ってくれるとわかることほど、投資家を安心させてくれるものはない。・・・
合理的な投資家の反応は、前倒しで買うだけでなく、利回り追求を行う資金がどこに流入するか関連するチャンスを探すことになる。
エラリアン氏がFTへの寄稿で、FRBプットがもたらしたものを指摘している。
資産価格の上昇はFRBが買い入れる資産クラス以外の分野にも波及しているという。
さらに、変化は価格上昇だけではない。
中央銀行の介入が市場のしくみにまで影響を及ぼし「伝統的な因果関係さえ逆転させてしまった」と話している。
エラリアン氏はこの状況を楽観していない。
2021年後半、投資家は試練を迎える可能性があるとし、引き金となりうる3つの「攪乱要素」を列挙した。
- 金融政策の反転(なさそう)
- 市場の混乱(あまりなさそう)
- 企業倒産の増加(一番ありそう)
今年これらが顕在化することがなかったのに、なぜ来年は顕在化しうるのか。
それは、経済が回復しうるためだ。
エラリアン氏は、景気が回復しインフレ期待が上昇していけば、FRBによる金融緩和・信用緩和の余地が小さくなっていくと予想している。
すると、これまで無理やり抑え込まれてきた企業倒産が表面化していくというわけだ。
エラリアン氏は、この攪乱要素を乗り切るためには、最近まで逆効果しかなかった手法が重要になるという。
何でも上がる流動性相場では投資の邪魔でしかなかったものが、徐々に真価を取り戻すという。
詳細なクレジット分析、テクニカル分析、シナリオ設定、賢明なストラクチャー、市場セグメントごとの流動性評価、投資上のミスの挽回可能性の理解向上などだ。
また、伝統的な知恵の再検討にも取り組むべきだ。
例えば、国債利回りが人為的に抑制されている中、伝統的なポートフォリオ構成とされる、株式60:フィクストインカム40の再検討だ。
もちろん、2021年が混乱の年となるのが決まっているわけではない。
実際、市場は企業や政策に楽観的な見通しを持っているように見える。
- 企業: ファンダメンタルズ改善が現在の高い資産価格を正当化する。
- 政策: 金融・財政・構造改革の政策ミックスを秩序ある形でリバランスする。
こうなる可能性がないわけではないし、現に資産価格はこうなることを前提にしているようにも感じられる。
その一方で、多くの人がこれらの実現を疑問視しているのではないか。
エラリアン氏は、2021年のリスクを2つ挙げている。
市場にとってだけでなく2つリスクがある。
1つは、望ましいことが政治的に実行できないこと。
もう1つは、実行可能とわかったことがもはや持続可能でなくなることだ。