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東京証券取引所アローズ 2020年のQ&A 9題(後編)
2019年12月31日

2020年に向けた市場の見方のQ&Aの続き: 2020は買いか売りか、何を買えばいいか。


Q6. ズバリ2020年は買いか、売りか?

先述のとおり、弊社(浜町SCI)は市場や個別銘柄の上げ下げを予想するスタイルではありません。
以前は特定の資産クラスに特化した運用でしたが、外部資金を預からなくなってからは分散を取り入れ、いっそう予想をしなくなりました。
上がると予想するから買い、下がると予想するから売るわけではありません。
むしろ、予想するのではなく後追いをしています。
下がったら買い、上がったら売るというスタイルです。

2020年についても私たちはこのやり方で満足しています。
来年もバイナリーな市場が続くと思うからです。
私たちは《最後のひと上げ》の可能性を強く感じており、一定のリスク・テイクをやめるつもりはありません。
一方、市場がピークアウトの可能性も高いと考えており、フル・インベストメントとはしません。
バランス型の投資が適切だと考えています。

バランス型投資の唯一の弱点は、市場が長期的に一方方向だけに動く場合です。
近年、この可能性も小さくなったように思います。
日欧や新興国市場はもちろん、米国株でさえ一方方向にだけ動き続けるようには思えなくなりました。
ある程度の振幅で上げ下げを繰り返す相場では、バランス型でうまく投資できればそこそこパフォーマンスを上げてくれます。

Q7. 何を買えば2020年を乗り切れるか?

残念ながら2020年は弊社の得意分野にとっていい時期は終わりそうです。
一方、3つ注目の分野があると考えています。

まずグロース株。
景気後退でも影響を受けないようなピカピカの銘柄です。
残念ながら、私たちにはその目利きの力がありません。

次にコモディティやコモディティ関連株です。
弊社は内規でコモディティに投資していませんが、コモディティの持つ分散効果はやはり無視できません。
先ほど、株は景気に先行すると言いましたが、コモディティ価格は(ドル建てで)逆にやや遅行する傾向があるのです。
(円建てだと詳細な検証が必要。)

最後が通貨《円》です。
円金利はやはりかなり低い。
円が重要な調達通貨であるためにリスク・オフ局面で円高となる傾向が続いてきました。
次の景気後退期もこれが再現する可能性が高いと考える人が多い。
しかもその時、他の多くの通貨とは異なり円にはさらなる利下げが考えにくいのです。

次の景気後退期も円高になると予想するなら、円に張るという可能性が出てくる。
具体的にはヘッジなし外貨投資を引き上げる、またはヘッジ付きにする。
あるいは、円買いドル売りのポジションをとる、などです。

この円トレードのリスクは、日本経済が沈没することでしょう。
リスク・オフで円が売られる可能性ですが、今のところ2020年にそれが始まるような気配はないように思います。

逆に買ってはいけない(正確には集中しすぎてはいけない)のは単純明快です。
(今全く持っていないなら、少しは買っていいかもしれません。)
中央銀行が買っているものは長期投資に資さないだろうということです。
日本でいえば、国債・REITに組み込まれるような不動産・ETFに組み込まれる株式などです。
これらは(長期的な)バブルの発生源に近い。
結果、将来の震源地に近くなる可能性があります。

短期トレードならこうした銘柄もありえますが、このタイミングで買いから入るのは椅子取りゲームのような戦いになるかもしれません。

Q.8 2020年の最大のリスクは?

私たちは独自の予想はしませんが、これまで話したとおり、来年、日本であれ米国であれインフレも金利も大きくは上昇しないと思っています。
それでもリスクと考えるのはインフレと金利です。

市場が重要と考える金利は、長期金利、10年金利です。
多くの資産価格モデルで伝統的に用いられてきた金利指標です。
この金利は現時点から10年後までの金利。
10年を10に分割して考えると、最も遠い金利期間は9年後から10年後です。
つまり、9年後の短期金利まで織り込んだ金利です。

将来の市場を占う上で長期金利が重要ならば、9年後も短期金利はこんなに低いのか、と自問することが必要です。
確かにリーマン危機後の世界経済は特異だったし、低金利が長く続くという予想も多い。
しかし、9年後はどうなのか。
もしも、9年後にはもっと過去普通だった状況に戻っていると考えるなら、短期金利ももう少し上がっているでしょう。
こういう推測が、程度は小さいかもしれないのですが、長期金利の上昇圧力になります。
もちろん、インフレや短期金利上昇がもっと前倒しでやってくると予想されるなら、この圧力は増すことになります。

長期金利の上昇要因となる将来の短期金利は、将来のインフレで占うことになります。
9年後も今のようなディスインフレが続くだろうか。
人々はディスインフレよりインフレを望んでいるだろうか。
もしも、人々がインフレを疎ましく思うなら、短期金利は上昇するでしょう。
中央銀行が利上げするはずだからです。

日本の話ならば、インフレは高まらないかもしれません。
しかし、米国ならどうでしょう。
米国でインフレが高まり、利上げが起こり、長期金利が上昇したらどうなるか。
2018年はまさにこうした連想が強まった時期でした。
まだ足元のインフレが高すぎる状況でなかったから、FRBは今年利下げできました。
しかし、インフレの基調が戻る時が来るなら、同じことが繰り返すかどうかは疑問です。

Q.9 長期投資で考えるべきこと

インフレが高まることにはプラスもありますが、やはり程度の問題です。
日本の場合、インフレが高まりすぎることは他国と比べマイナスが相対的に大きい。
日本でインフレが高まる場合、日本は究極の選択を迫られます。
他の国のように利上げするか。
高インフレを甘受し、低金利を維持するか。

仮に利上げをする場合、インフレは抑制されるでしょう。
しかし、同時に金利上昇が財政を圧迫します。
日本の国家債務は他の国と比べてやはり相当に大きい。
金融・財政政策が協調的に引き締まることになります。
インフレにも効くのでしょうが、景気にも強く抑圧的に効くことになります。

仮にインフレを放置する場合はどうなるでしょうか。
これは高インフレと低金利(つまりかなり大きなマイナスの実質金利)が持続することを意味します。
高インフレは通貨《円》の価値の低下を意味しますし、マイナスの実質金利はお金の保管場所として不適切であることを意味します。
今も円の実質金利はマイナスですが、その幅はひどく大きくはない。
ディスインフレだから、金利がつかなくても大きくは損しない。
これが、そこそこのインフレになれば、円を持つのを嫌がる人がいっそう増えることになるでしょう。
これまでは円高を心配していた日本が、円安を心配する社会になりかねません。
それなのに、財政上の制約から利上げは難しいのです。

これに対する楽観シナリオはどこにあるでしょう。
上げ潮派の人は、経済成長が戻れば財政再建が可能になると主張し続けてきました。
日本がバブル後30年近く、一部例外の期間を除いて、財政を悪化させてきたのは、こうした夢があったからです。
低成長より高成長の方が税収が増えるのは事実ですが、高成長はインフレや金利の上昇要因にもなる。
楽観シナリオはやはり楽観というしかありません。




山田泰史山田 泰史 横浜銀行、クレディスイスファーストボストン、みずほ証券、投資ファンド、電機メーカーを経て浜町SCI調査部所属。東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修了 理学修士、ミシガン大学修士課程修了 MBA、公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。

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