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ウォール街 2020年のQ&A 9題(前編)
2019年12月31日

2020年に向けて、市場の見方を弊社(浜町SCI)調査部 山田が一問一答で解説しています。


Q1. 市場のピークアウトはいつか?

何度かこのコラムで書いていますが、弊社は、市場や個別銘柄の上げ下げを予想するスタイルではありません。
ですから、私たち独自の市場のピークアウト予想を持っているわけではありません。

ただし、これを考える上では、やはり米国株市場の動向が重要であるのがコンセンサスだと思います。
質問の「市場」が日本であれ、日米以外の市場であれ、米市場のピークアウトの影響を受けるということです。
現時点では、米市場のピークアウトは他の市場にも悪影響を及ぼすと予想する人がほとんどだと思います。

そうなると、もう1つのポイントが米景気後退入りの時期となります。
弊社の調べでは、過去4回の米景気後退期、株式市場は景気後退に平均8.5か月ほど先行していた 。
つまり、景気後退入りをその1年ほど前に予見できれば、ピークアウト前に店じまいができる可能性があることになります。
だから、みんな景気後退を予想しようとしたり、高名なエコノミストの話を聞きたがったりするわけです。
一方、ロバート・シラー教授によれば、職業的予想者であっても1年先は予想できないのだそうです。
そうだとすれば結局のところ、不可能とは言わないまでも、市場のピークアウトを予想するのは至難の業ということです。

こうした厳しい現実に加え、シラー教授は、市場や経済に対する人々の予想が自己実現的に実現する可能性を指摘しています。
現在のように、市場の上げを予想する人が多くなれば市場は上がることもあるし、景気後退を予想する人が多くなれば本当にそうなってしまう可能性があるのです。
現状、2020年に米経済が景気後退入りすると予想する人はかなり少なくなりました。
これは、大統領選と、それにともなう政権・FRBの動向を先読みしたものでしょう。
景気後退は、多くの人が2021年以降と予想しています。
逆に言えば、そのあたりを目安に人々の危機感は急速に上がっていくのでしょう。
ピークアウトがそこから(平均)8.5か月前ならば、もうそろそろお尻に火が点き始めてもおかしくない。
そんなに切迫しているかどうかは誰もわかりません。
でも、可能性はあるということです。

Q2. 今回の《最後のひと上げ》ではバブルはある?

それは定義によります。
バブルの定義を《ファンダメンタルズにより支持されない持続不可能な資産市場》と定義するなら、答はYesとなります。
なぜなら、一部の終末論者の皆さんが主張するように、現在はほぼすべての資産クラスがバブルということになるからです。
原因は持続不可能な金利です。

米国をはじめ世界のほとんどで過去35年あまり金利は趨勢的に低下傾向にありました。
その間、多くの国で財政は悪化しました。
財政悪化で国債利回り低下というのは、長い目で見れば持続可能とはいえないでしょう。
金利が低下すれば(DCFの式を見れば自明ですが)すべての資産価格は上昇が正当化されます。
金利が持続可能でないとするなら、そういう高い資産価格も持続可能ではないことになります。
こうした見方からすれば、現在ほぼすべての資産価格がバブルということになります。

しかし、これは長い目で見ればの話です。
中期的なホライズンで現在の低金利が持続可能かという問いなら、答は違ってきます。
長期的には金利が上昇するかもしれないが、中期的ならば低金利が持続する国もあるのでしょう。
正確には、中期的には低い長期金利が持続する可能性があるのです。
ならば、その間、現在の資産価格はそこそこ正当化され続けるかもしれません。

Q3. 今回はパターンに当てはまらない?

過去2回の米景気後退の前にはバブルが起こりました。
2000年のITバブル、2006年の住宅バブルで、日本の市場もこの影響で活況となりました。
なぜバブルが繰り返されたかについてはさまざまな原因があるのだと思いますが、一部の人はFRBの金融緩和の結果だと指摘しています。
1990年代、世界でイノベーションが進み、生産性向上によりインフレが進みにくくなる現象が見られました。
従来FRBにとっての金融緩和のブレーキ・ポイントはインフレ上昇でした。
ところが、インフレが上がりにくくなると、ブレーキのタイミングが遅くなります。
これが、バブルを生みやすくしているという指摘です。
今回もある程度その構図は当てはまるのだと思います。

一方で、多くの人が指摘しているように、今回の資産価格上昇にはバブルの重要な1つのエッセンスが欠けています。
それは《熱狂》や《陶酔感》です。
日本のバブル期でも見られましたが、バブル期には通常期まともな人でさえ正気を失うような感情的な盛り上がりがあるといわれます。
今回はそれがない。
むしろ、みんな心配し続けながら投資を続けている感じです。

今回の資産価格上昇の特徴は(債券以外)目玉商品がないことです。
IT銘柄や住宅のような目玉がない。
こんなところも、これまでのバブルとの違和感を感じるところです。

Q4. ならば市場の急落はない?

もちろん、そうとは言えません。
金利が持続不可能なほど低いのですから。
米国の実質成長率が2%、インフレが2%程度とすれば、長期金利は4%でおかしくない。
それが2%にも満たないのが現状です。
2018年を回顧すればわかるとおり、長期金利が急騰すれば、資産市場は混乱します。
あの時は3.25%あたりでそうなりました。

なぜFRBはインフレが2%程度まで上がっているのにFF金利を2%未満にしているのか。
おそらく中立金利が0%近傍にあると見ているからでしょう。
あるいは、金利を低位に保ちたいために、そういうふうに装っている。
でも、これは日本と中立金利がほぼ同水準ということを意味し、私たちのイメージとは少々異なります。
仮に、FRBの考えが正しいとしても、足元の景況感とはずれているように思われます。
つまり、少なくとも短期的には景気を過熱させるように思います。

ここで可能性が出てくるのが、最後のひと上げだけでなく、インフレの上昇です。
インフレが上昇すればFRBのブレーキ・ポイントがやってきます。
インフレ上昇は政治に影響を及ぼしますから、金融緩和の解除が受け入れられやすくなる。
国民がインフレに不満を強めれば、大統領もFRBに金融緩和のプレッシャーを与えるのを考え直すでしょう。
そうなれば、米長期金利が3-4%まで上昇し、それにともない資産価格急落となる可能性はあるでしょう。

ただし、インフレの動向を見る限り、すぐそうなるような兆候はありません。
2020年の話ならば、そういうシナリオが意識されて、テイパータントラム(バーナンキ・ショック)や2018年のようなことがある程度でしょう。
そうなら急落ではなく調整です。

貿易戦争等、地政学的リスクを心配するような声もありますが、私はあまり心配していません。
ほとんどの地政学的リスクは米国が喧嘩を売った面があります。
やめようと思えばやめられる話です。

Q5. 次の弱気相場はどうなるか?

強気派は弱気相場(20%下落)は来ず、調整(10%下落)が起こるだけといいます。
単純な予想を好む人は過去2回のように、急落が起こって、底を打って回復に向かうといいます。
今回は、それ以外の展開を予想する人が何人かいます。

まずレイ・ダリオ氏の「スクイーズ」。
米社会でゆっくりと債務・負担が増大し、それが足かせとなって経済・市場が停滞するというシナリオです。
聞けば聞くほど1990年代の日本の《失われた10年》と重なってきます。

次にジェフリー・ガンドラック氏の米市場長期停滞説です。
日本、欧州、新興国市場と世界市場の花形が変遷し没落していった。
次は米国という話です。

不気味なことに、ダリオ氏とガンドラック氏の両方に共通するのは長期的な停滞と米ドル安です。

米国市場とは短期、中期、長期、超長期のいずれで見ても右肩上がりの市場です。
だから、多くの高名な投資家が米市場への長期投資を推奨してきました。
その信念が今少し揺らいでいるのだと思います。

ただ、個人的・短期的にはそこまで心配していません。
金利が低下局面を終えたように見えますので、バラ色の将来を夢見るべき時期ではないのでしょう。
しかし、米経済・市場が凋落するようなことまで起こる確率は高いとはいえません。
株価が長期的に低下するとか、米ドルが基軸通貨でなくなるとか・・・
そういう大きな変化は、やはりそうそうあることではありませんから、メイン・シナリオにはしにくい。
リスク・シナリオとして意識はすべきですが、それをメイン・シナリオに据えるべきではないのです。
リスクにすぎないなら、大きく張るのでなく、保険を掛けるのにとどめるべきだと考えています。

(後編に続く)


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