ロバート・シラー教授が、順調な米住宅市場について、いつ下落を始めてもおかしくないとし、仮にそうなれば経済に大きな影響を及ぼすと示唆している。
虎の子の貯金を10-20%の頭金にあてた2005年の住宅購入者は、2012年までに価格下落で壊滅的な損失を負った。
今まで持ち続けていられたなら実質ベースの住宅の価値はおそらくほぼ回復しているだおうが、この15年の経験を繰り返したい人はいないだろう。
シラー教授がThe New York Timesへの寄稿で、米住宅価格上昇への懸念を滲ませている。
教授によれば、ウィルスを避けおしゃれな場所を望む購入者の増加で、特に郊外で過熱感があるのだという。
ある書籍の分析を引く形で、6つの要因を挙げている。
- 「根拠なき熱狂」
- 「公正な貸出と手の届く住宅のための政策」
- FRBの利下げ
- 世界的な貯蓄余剰
- 過剰な証券化
- 「民間投資銀行による規制を受けないプライベート・ブランドでの証券化」
住宅市場にかかわる様々なステイクホルダーたちが、浮かれ、投機し、助長し、煽り、伝染し、警戒を怠った。
こうした上げ圧力を受けた米住宅価格は上昇しながらもサブプライム/リーマン危機で大きくクラッシュした。
シラー教授は「ブームとクラッシュ」が再現しかねないと警告しているのだ。
S&Pケースシラー米全国住宅価格指数(同指数は名目ベース)
シラー教授は、いつものように、相場を予想しているのではないと、意見の趣旨を明確化する。
2005年と比べ状況には良い面・悪い面があり、価格だけで予想すべきではないのだろう。
しかし、2005年にはピークの直前から突如としてメディアが「住宅バブル」を報じるようになり、市場が急変したとも指摘。
特にコロナ・ショックの影響で差押え・破産などが増える可能性も否定できず、楽観一方で臨むべきでないと書いている。
そう警告した上で、住宅が単なる投機・投資の対象以上の意味を持っている点も指摘している。
良いところに住むことの価値は、家族にとって定量化できるものではない。
もしも費用を負う余裕があるなら、市場の短期的変化に関係なく、今後何年も済む住宅には価値があるのかもしれない。
金銭面だけでなく、人の幸福まで効用に含めて判断しろということ。
なるほど(場所によるばらつきはあろうが)前回のピークから実質ベースで住宅価格は回復したのだから、住むための住宅なら、高値で怖気るべきでないのかもしれない。