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Blackstone 1990年代は繰り返すのか:ブラックストーン
2019年12月10日

ブラックストーンのジョー・ザイドル氏が12月の月例書簡で、現在の経済・市場と1990年代の類似点・相違点について検証している。


「1996年(株価)バリュエーションが問題となった。
アラン・グリーンスパン議長(当時)は上昇するPERに警鐘を鳴らした。
しかし、バイロンは、さほど心配はいらないと述べ、グリーンスパンに自身をワシントンに召喚するよう促した。
バイロンはグリーンスパンに対し、市場は合理的な株価水準にあると納得させようとした。
バイロンはグリーンスパンの考えが変わったかもしれないと思ったが、その翌日、グリーンスパンは当時のバリュエーションが『根拠なき熱狂』の結果ではないかと講演で述べた。」

ザイドル氏が自社サイトで、歴史的な長さ・大きさの強気相場となった1990年代の話を紹介している。
「バイロン」とは、ザイドル氏の現在の同僚(あるいは上司)であるバイロン・ウィーン氏だ。
ウィーン氏は毎年初めに公表する「びっくり10大予想」で有名。
今年ですでに34年目になる。
ザイドル氏が言及した1996年、ウィーン氏はモルガンスタンレーに在籍し、すでにスター・ストラテジストだった。
まだアナログの時代、業界内では「びっくり10大予想」の違法コピーが引っ張りだこだったとザイドル氏は回想している。

1996年ウィーン氏は強気を主張したが、グリーンスパン議長はそれをそのまま受け取ることがなかった。
背景には、ロバート・シラー教授のアドバイスがあった。
グリーンスパン議長にアドバイスしたのはウィーン氏だけではなかったのだ。
シラー教授は、長く続く強気相場について「根拠なき熱狂」という言葉を用いてグリーンスパン議長に警告し、議長はそれに乗っかった。
議長が果たして本音でどちらを信じたのかは明らかでない。
しかし、その時点でグリーンスパン議長が発したかったメッセージは青信号ではなく黄信号だったのだろう。

結果、どちらの言い分も当たっていたといえる。
その後、米市場は2000年まで4年間、さらに110%(10%ではない!)も上昇したのだから、青信号は正しかった。
しかし、2000年にドットコム・バブルが崩壊したのだから、黄信号もまた正しかった。
ホライズンを短・中期に限るなら、ウィーン氏の勝利となるが、市場関係者と学者という位置関係からいえば当然のことともいえるのかもしれない。

今、1990年代の長い長い強気相場と現状が似ているとの指摘が相次いでいる。
それはFRBが「サイクル中期の調整」のための「保険的利下げ」を行ったことでさらに強まっている。

ザイドル氏は現在の株式相場を総括する。

今日の強気相場は、公式に史上最長であり、あと数%で史上最大になるが、1990年代終わりの強気相場といくつか重要な特徴で共通している。

共通点の1つは市場の上昇に広がりがないこと。
上昇が一部銘柄に集中していることはあまりいいニュースではない。
とはいえ、ザイドル氏はドットコム・バブルが再現するとも考えていない。

共通点の2つ目がFRB金融政策の後押しだ。

「1990年代の経済拡大の間、FRBは2度金融緩和サイクルを採用している。
1995年に75 bp、1999年に75 bpだ。
金融緩和はリスク資産を押し上げ、経済成長を刺激した。
初めの1995年の調整では米成長率が倍増した。
1995-2000年で経済規模は1/3も増え、7.6兆ドルから10.2兆ドルとなった。」

長い景気拡大・強気相場と「サイクル中期」での「保険的利下げ」という構図は現在の風景と似ているように見える。
FRB高官の中にも、1990年代の対応を明示的に意識している人がいるほどだ。
FRBはうまく景気後退と金融不安定の両方を回避することができるのだろうか。

ザイドル氏の意見は、それ以前のところにある。
そもそも今後の経済・市場が1990年代のようには上向かないと考えているのだ。
当時とは違い、金融政策が実体経済を刺激する効果が極めて小さいためという。
効果が発揮されない理由として、人口動態と生産性の伸びの頭打ちを挙げている。

私の見方は、ウォール街の多くの予想者よりもダウンサイド・リスクに対し強く心配するものだ。
今後6-12か月で景気後退はやってこないかもしれない。
しかし、明らかになりつつある経済の軟化は無視できない。

興味深いのはバイロン・ウィーン氏との微妙な温度差だ。
先月末、同氏は現在の株価がまだいくぶん割安だとして、上げの余地があると話している。
市場の主たるドライバーが世界に溢れる流動性だとして、それが止まるまでは過度に心配すべきでないと語った。
なんとなく、ウィーン氏は1996年と同じ強気、シラー教授の立ち位置をザイドル氏が務めているような感覚だ。

一緒に働く2人の意見が割れるのは健全な現象だろう。
問題は、結果どちらが当たるのかだ。
しかも、投資家にとっては(少々レベルの低い話だが)短・中期の予想こそがとりあえず重要なのかもしれない。


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