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1984年と鑑写しの現在:ジェフリー・ガンドラック
2021年6月5日

ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏は、投資家が金利・インフレについて知っておくべきこと、FRBバランスシートと米株価の関係について語っている。


私が金融市場で働き始めた頃興味深かったのは、債券利回りが本当に高かったこと。
1984年5月31日、長期債利回りは14%だった。

ガンドラック氏が5月12日に行われたオンライン・コンファレンスで、キャリアをスタートさせた1984年を振り返った。
14%という数字に驚かれた読者もいるだろう。

現在、多くの市場参加者が高金利・高インフレを知らないことが不安視されている。
ブラックロックのラリー・フィンクCEOは、経験のない状況が実現した時、市場が大きな反応をしかねないと懸念を述べている。
そうした懸念から考えると、現在いつになく年寄りの昔話が有用になっているのかもしれない。

ガンドラック氏は、重要なのは長期金利だけでないと話を続けた。

もっと注目すべきは、インフレ率が1984年5月時点、CPIで4%だったことだ。
つまり、(長期)債券の実質利回りが1,000 bpだった。

4%というインフレ率、1,000 bp(=10%)の実質利回りに驚かれた読者もいるだろう。

現在の米国債の実質利回りはイールドカーブ全体にわたってマイナス圏にある。
つまり、米国債を買ってもインフレに負ける。
だから、ゴミ同然と見る投資家もいる。
読者は、当時の10%の実質利回りを羨ましく思うかもしれない。
しかし、それは早合点だ。

誰もそれを望まなかった。
みんな債券で損をし、それを没収証書と呼んだ。
注目すべきなのは、みんな4%のインフレが持続不可能と考えていた。
みんなインフレが再上昇すると確信していた。

4%から上昇すると確信されていたとの話に驚かれた読者もいるだろう。

米国は1970年代から1980年代初めにかけて2桁に達するインフレに苦しんだ。
長い戦いの末ポール・ボルカーFRB議長(当時)の荒療治によって退治されたが、多くの人は1984年頃まだ高インフレが再発すると考えていたのだ。
しかし、その多くの人の予想は外れることになる。

私がこの仕事を始めた時、みんな一桁の債券利回りはおかしいと考えていた。
そして、インフレはそこからただただ下がったんだ。
前年比で4%に戻ることはなかった。
今日まではね。

奇しくもこのコンファレンスの当日、米労働省が前年比4.2%のCPI上昇を公表した。
ガンドラック氏は、現在と1984年が鑑写しのようだと感慨を述べている。
多くの人が、インフレ率が再び下がる、つまりインフレ上昇を一過性と考えているところも鑑写しになっているという。

FRBやFRBの一部のようなジャネット・イエレン財務長官はインフレが一過性と言うが、なんでわかるんだ。

政府がシステムに莫大なお金を注入している今、インフレを一過性と決めつけることはできないとガンドラック氏は話す。

FRBバランスシートと株価

質疑の中でガンドラック氏は、FRBも(戦中・戦後の米国、現在の日本のように)イールドカーブ・コントロール(YCC)に着手するか尋ねられている。
ガンドラック氏の答は、もうすでにやっている、というものだった。
現在の莫大な金額の債券買入れは、事実上のYCCに当たるとの考えだ。
同氏によれば、FRBの考える10年債利回りの上限は2.5%あたりだろうという。

また、市場の注目の的となっているテーパリングに関して、FRBバランスシートと米株式市場の関係について言及している。

「何年も言ってきたが、これはほぼ定数、ほぼ物理法則なのだが、FRBバランスシート:S&P 500 は一定だ。」

現在、FRB高官やイエレン財務長官からテーパリングを匂わす発言が聞かれ始めている。
匂わしては否定し、反応を探り、徐々に市場に織り込ませようというのだろう。

ガンドラック氏はFRBのバランスシート正常化が株式市場に深刻な影響を及ぼすと予想する。

もしもFRBが大衆への小切手配布を後押ししなくなれば、私は、株式市場の命運が尽きると考えている。
もしもFRBがバランスシートを縮小したら・・・FRBがバランスシートの縮小を始めた2018年第4四半期を思い出せ。
株式市場は下落を始め、史上最も急速な弱気相場になり、FRBが『もうだめだ』といって現在の政策に戻るまで続いた。

予想の時点を正確に把握しておこう。
テーパリングとは、資産買入れの規模を縮小すること。
テーパリングの時点では、まだ緩やかにバランスシートは拡大を続けた。
前回のテーパリングは、その示唆の時に市場が動揺(テーパ―タントラム)し、その後は無風だった。
一方、バランスシートの縮小では、その途中で長期金利の上昇が起こり、米市場は弱気相場すれすれまで下げる展開となった。
政策を元に戻し、さらに強力にすることで混乱は収まった。
しかし、一連の経過は、FRBがこの循環過程から二度と抜け出せないのではないかとの心配も生み出した。


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