1982年の最悪・最良の出来事:レイ・ダリオ

ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏が、現在に至る人生の重要な節目について語っている。


私は12歳の時に市場の虜になった。
キャディーをやって小遣いを稼ぎ、株を買った。
みんな(ゴルファー)市場のことをしゃべっていた。

ダリオ氏がBloomberg番組で、投資を始めたきっかけを話している。
思えば、オマハの賢人ウォーレン・バフェット氏も新聞配達で稼いだお金で株式投資を始めたのが11歳だった。
この11-12歳という年齢はなんとも程よい感じがする。
今なら世界中に自分の子供をネタにすべくひどく幼齢の子供に投資を強いる親が多くいそうだ。
こうした話とダリオ氏やバフェット氏の話とははっきりと異なるところがある。
子供が自分で小金を貯めて、小金のうちに自ら投資を始めるという点だ。
日本ではとかく株式投資というと怪しげなものとの印象が強く、子供に株をやらせるというメンタリティの親は少ない。
(その一端は業界の振る舞いにもあるのだろう。)
そういう暗さのないエピソードはやはりうれしい。

ダリオ少年は最初、株価5ドル以下で名前を唯一知っている会社の株を買った。
この少年は幼い頃から戦略家だった。

「もっと買えればもっと儲かると考えた。
それが私の戦略だった。」

この戦略は大成功だったのだそうだ。
実は、買った銘柄は破綻寸前だったのだが、買収者が現れてくれたのだ。
そこで、ダリオ少年はその後を暗示するような結論を下している。

株価は上がり、私は思った:
『このゲームは簡単だ。』
それで市場に携わろう、このゲームは簡単だと考えたんだ。

ダリオ少年は成長し、ハーバード・ビジネス・スクールを出てコモディティ・ビジネスへ。
1975年にはブリッジウォーターを創業する。
そこで(ダリオ氏の著書『プリンシプルズ』などでも登場する)有名すぎるエピソードが起こる。

「1979・80・81年、私は米銀が新興国から返済を受けるより貸す方が多くなっていると計算した。
これが債務危機になり、経済危機をともなうと予想した。
そして1982年8月、メキシコが債務をデフォルトし、多くの国が追随した。」

メキシコのデフォルトが危機のスタートなら、ダリオ氏の読みどおり、当然株式市場は弱気相場入りするはずだった。
しかし、相場は逆に動いたのである。

「わたしはこれ以上ない失敗を犯したんだ。
1982年8月こそ、株式市場の大底になったんだ。」


この時期はボルカー・ショックが収束した頃にあたる。
ある意味、ダリオ氏はボルカー議長(当時)のFRBに煮え湯を飲まされたようにも見える。
しかし、ダリオ氏は以前からボルカー氏を「私のヒーロー」と呼んで敬愛している。

今では史上最高のヘッジ・ファンドと称えられるブリッジウォーターだが、この時には何が起こったのか。

「結果、8人いた従業員はすべて解雇せざるをえなくなり、自分の金もなくなり、父から4,000ドル借りなければならなかった。
これは人生で最もつらい経験だったが、私の人生に起こった最良の経験だった。
この経験は、私の意思決定についての考えを変えた。
謙遜が必要であること、自分の積極性を維持しながら自分の意思決定の誤りを恐れることを教えてくれた。」

ダリオ氏やブリッジウォーターを教祖・宗教と揶揄する人も少なくない。
ダリオ氏のプリンシプルズ、それに基づく社内ルールに対して向けられたものだ。
この強固な信念は、1982年の大きな失敗に根を持つものなのだ。

ダリオ氏は、最良の分散ポートフォリオについて、自社ファンドを例に説明している。

  • All Weather: バランスのとれたリスク・テイクを目指すもの。
  • Pure Alpha: アクティブ運用で投資のαを狙うもの。

CAPMの式で言えば、前者がベータをとりにいくもの、後者がアルファをとりにいくものと言える。

何が起こるが、何を保有すべきかわからないなら、私たちがオール・ウェザー戦略と読んでいるものが適切だ。
・・・
そして私たちはピュア・アルファ戦略(ファンド)も持っている。
アルファとベータを分離して提供するためだ。
ほとんどの投資家はこの2つを分離する時に間違え、市場で儲けられると思い込んでいる。
ゼロサム・ゲームでは、おそらくそうした賭けでは損をするだろう。

ダリオ氏が言いたいのは、アルファとベータを分離して取り組み、市場をアウトパフォームする理由がある時にはアルファをとりにいき、理由がないときにはベータをとりにいくべきということのようだ。
残念ながら、ブリッジウォーターの該当のファンドは募集を行っておらず、予定もないという。
(もっとも、いずれも機関投資家向け。)
この作業は投資家自身がやらなければいけないようだ。

ダリオ氏は、人生で大切なことを尋ねられ、成功した投資家らしい答えをしている。

金銭的成功は・・・ほとんどが私がゲームが好きなことからくる意図せざる結果だ。
うまくゲームをやればお金が儲かるが、家族・生計を適切に養うことより金銭的成功を優先したことはない。
・・・
意義ある仕事と意義ある関係こそが最も重要なことだ。


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