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1970年代との類似が強まる:ケネス・ロゴフ
2021年9月3日

IMFチーフ・エコノミストも務めたケネス・ロゴフ ハーバード大学教授は、1970年代と現在の類似が強まっているとして、高インフレの持続を心配している。


高インフレが一定期間持続する可能性が高いのか?
最近まで私はそうならない確率の方が明らかに大きいと言っていた。
今では、特に今後数年にかけて、さほど確信が持てなくなった。

ロゴフ教授がProject Syndicateで、インフレを一過性とする見方への確信が揺らいでいると吐露した。
つい最近まであった確信を揺らがせたのは何か。
1つが米軍のアフガニスタン撤退だったようだ。

多くの経済学者がインフレを純粋に専門的な問題と見ているようであり、ほとんどの中央銀行もそう信じたがっている。
実際には、持続的インフレの根源とは主に政治経済学的問題に由来しており、1970年代と今日の間の多くの類似点は平静を失わせる。

実際、米識者の中には、現在の状況を1970年代に似ていると指摘する人が多い。
アフガニスタン撤退のニュースでは、老人はみな口を揃えてサイゴン陥落のデジャブを指摘した。
そして、地政学的な要素を含めて、それが1970代に似た経済環境(特にインフレと弱気相場)につながる可能性を指摘する人が多い。

ロゴフ教授は1970年代との類似点をいくつも挙げている。

  • 「制度規範に挑戦する」大統領(ニクソン、トランプ)から「徹底してまともな」大統領(カーター、バイデン)へ
  • 長い戦争の敗北(ベトナム、アフガニスタン)
  • 生産性鈍化
  • 供給ショック(原油、保護主義・サプライチェーン分断)
  • 財政再建が進んでいない

財政問題については、ロゴフ教授は有名な著書『国家は破綻する』で財政再建の重要性を説いている。
その教授が、パンデミックが起こると、この問題の本質がエイリアンによる侵略のようなものだと指摘し、財政を心配などせず必要なお金を使うべきと論じた。
財政再建とは晴れた時に借入余地を増やしておくことであり、雨が降ればそれを使うのは当然だからだ。
それこそ自身がこれまで財政再建を主張してきた趣旨だというわけだ。

これからの10年は1970年代と《韻を踏む》ことになるのだろうか。
ロゴフ教授は、当時との大きな違いを1つ挙げている。

「これらすべての類似点にもかかわらず、今日の独立した各国中央銀行がインフレの防波堤として機能しているのは事実だ。
インフレ圧力が制御できなくなりそうなら、利上げする準備がある。
1970年代には、独立した中央銀行はわずかしかなく、米国ではそう行動せず、大規模な貨幣膨張でインフレの火に油を注いでしまった。

ロゴフ教授は、現在多くの国で独立した中央銀行が主流になっていると書いている。
一方で、パンデミックにより各国の政府・民間の債務がさらに拡大しているとも指摘している。
利上げをすれば、債務者が困難な状態になりうるという。
独立といいながら財政従属も仄めかしているのだ。
教授は過度に悲観的になりすぎるなと説くが、かといって希望の光も示してくれないのである。


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