政治

中国のピーターパン・シンドローム:カイル・バス
2019年12月11日

ヘイマン・キャピタルのカイル・バス氏が、世界銀行による対中融資について疑問を呈している。


最初の疑問は、なんで世界銀行が中国に年30-40億ドルもの資金を融資しているのか。
・・・世界第2位の経済規模の国に資金を融資している。
それが量子科学実験衛星となっている。
パテック・フィリップの時計、ロールスロイス、シャトー・ラフィット・ロートシルトのワインの最大消費国に融資している。

バス氏がCNBCで、世界銀行と中国を批判している。
同氏にとっては中国叩きは現在の日課である。
バス氏は、米国民の素朴な感情に訴えかける。

「そして、米国の消費者、米国の納税者が世銀ローンを保証している。
私たちのおかげで世銀はAAA格の格付けを得ているんだ。」

米国が中国を叩く時、視野を広げてみればどっちもどっちということが多くある。
しかし、バス氏が中国を叩くとき、それなりによくできたアングルになっている。
様々なファクトを織り交ぜ、悪の権化のような国家を描き出すのだ。
この日もバス氏は本質的なこと、関係の薄いことを織り交ぜ、中国を批判した。

中国は(途上国を)卒業しない。
中国は世銀に入り込み、世銀に『マネジング・ディレクター, 人間関係責任者』という地位を設けた。
信じるかどうかわからないが、世銀における倫理の責任者は中国共産党員なんだ。

倫理うんぬんのところは香港の混乱を念頭に置いた印象操作だろう。
そうわかっていてもクスりとなるようなレトリックだ。

世銀が中国に今も融資を継続していることについては多くの人が同様の疑問を持つだろう。
トランプ大統領も昨日ツイッターで、世銀が中国への融資を続けるべきでないと述べている。
一方の世銀は、今後も中国への融資を継続する意向を示している。

中国経済が2010年に日本を抜いて世界第2位になってから10年目。
貧富の差があるのは事実だが、それでもいつまでも途上国の恩恵を受け続けるのには異論もあろう。
全体として豊かな国家でも貧しい人の頭数が多いから途上国としての恩恵を受け続けるというのはやはりどこかおかしい。
何かプロセスが抜け落ちている。

日本はサンフランシスコ講和条約の翌年1952年、世銀に加盟し、世銀の資金供与が戦後復興の大きな助けとなった。
日本が最後の借り入れに調印したのは1966年と比較的早く、これは日本の復興が急速に進んだことを指している。
逆に現在では米国に次いで世銀に対する第2位の出資国となっている。
ちなみに3位が中国、以下ドイツ、フランス・英国と並ぶ。
中国は出資をして世銀内での発言力を持つ一方、そこから借金をしているわけだ。
これは純粋に金融機関のありようとしても良くないだろう。

中国は今や途上国を援助する側でもある。
2015年に中国主導で設立されたアジアインフラ投資銀行(AIIB)は途上国に資金援助することで中国が進める「一帯一路」構想の強力なツールとなっている。
しかし、AIIBについては《債務のわな》の問題も指摘されている。
借り手の途上国が過剰な債務を抱えることになったり、返済できない場合にはAIIB(事実上中国)にインフラを没収されたり強い制約を受ける事例が指摘されている。
AIIBの年間融資額は30億ドル超(2018年)というから、バス氏のいう「年30-40億ドル」は決して無視できるものではない。

この議論はやはり米国側に理屈がありそうだ。
ならば、中国も意外に素直に意向を受け入れるかもしれない。
似たような議論は日本の対中ODAでも起こっている。
日本の対中ODAは2006年に一般無償資金協力を終了し、2007年に円借款の新規供与を終了した。
中国が日本を経済規模で抜いた今、日本が中国を援助するという構図は適切でないとし、2018年には限定的に継続していた協力も新規採択を終了した。
中国経済が日本を抜いて丸8年経ったところで、日本の援助・協力は区切りをつけた形だ。

つまり、中国はそこそこ理屈を踏まえているところもあるのだ。
一方で、いつももらっていたお小遣いはやはり続けてほしいのだろう。
だから、西側諸国はおかしなところを指摘し続けなければいけない。
それを少々乱暴・感傷的にいうとバス氏の主張になる。

繰り返すが中国のように発展した国に世銀が資金を融資するために米国の納税者が保証を供与するのはばかげている。
世銀は、苦しむ人たち、弱い人たちを抱える貧しい国に資金供与し、彼らを貧困から引き上げるためのものじゃないか。
中国には世界最大級の数の億万長者がいて、世界のトップ・ブランドを買い漁り、みんな知っているように世界における米国の最大の軍事戦略上の競争相手だ。


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